もくじ
第1回一本の電話から。 2017-05-16-Tue
第2回神社ってなんですか、先生? 2017-05-16-Tue
第3回持って生まれたフィーリング 2017-05-16-Tue
第4回秘めている感情 2017-05-16-Tue
第5回言葉にするって。 2017-05-16-Tue

ここ3年ほど、毎日飽きずにバタートーストに魅了されています。日本に住んで3年、どうやらそのことに関係があるらしい。ロサンゼルスから来ました。よろしくお願いします。

言葉にできるまで。

言葉にできるまで。

担当・ユウキ

第4回 秘めている感情

自分が何が好きなのか、わかるには…
そうねぇ…
私の母はものすごく厳しい人だったの。
自分の箱の中で育てたくて、
その箱から出たら、
ぽんぽんぽんと箱の中に返されるわけよ。
 
私は怒られたくないから、
いい子でいよう、褒められることだけをしようって
頭がそっちばかりに行って。
あまりそれが強いと、
自分がなにをしたいのか、なにが好きなのか、
考えられなくなってきちゃうんだと思う。
はい…
子どもを信頼して、見守ってあげること…。
ほったらかしにするのと、見守るというのは
全然違うという気持ちがあるのね。
外の人が見たら「あんなにほっておいて!」
と見えるかもしれない。
でも、見守っているのよね。親として。
それは子供に伝わると思うの。
 
例えばこの家族は(手のひらに円を描き)
この円の中だけで見守ってあげる。
で、落ちそうになったらぴっと支えてくれる。
危ないよーって。
ある親は(手のひらより大きな円を描き )
これぐらいの円があるわけよ。
その中で自由にさせてくれて、
落ちそうになったら支えてくれる。
やっぱり円が大きければ大きいほど、
子供は自信を持って生きていける。
 
そうすると、
おまえできないなって言われてもへこたれないし、
自分がやりたいということが
人から見てどうということよりも
「やってみたい」という思いが
強くなるんじゃないかと思うの。
はい。
だからまず家庭かな、って思うのよね。
それと、日本人はやっぱりよその人の目、
恥ずかしくないようにというのが強いのよね。
それで冒険ができない?
そう、冒険!
Fearというの?
それが強いと思うの。
 
と同時に、成功している日本人もいっぱいいるわけじゃない?
そういう人たちを見ると、
やっぱり思ったことを通してるよね。
人の話をばっさり切り捨てるんじゃなくて、
聞きながら、その中でチョイスしている。
もともと持っている資質、ですか?
一応みんな持ってると思うよ。
生まれた時から持っている。
アメリカでは「人はみんな表現したいし、すべきだ」
という教育を受けるんです。
うんうん。
Everyone has something to say. (誰にも意見はある)
Yes.
でも日本ではそういうのって
あまり求められてないのかなって?
表現をすることって…。
いやぁ、したいんだと思う。
したくてもできないから
悩んでるんだと私は思う。
自分が前に出るとか、自分を表現するとか。
そういうことは「いけないこと」だと
知らないうちに染みついちゃってるんじゃないかな。
  
心の奥底では、いいなぁ、
私もやってみたいなぁって。
でもその前に、できるわけないよ、って思っちゃう。
 
本当にやりたい人は恥をかいてもやる。
恥かかなきゃ成長できないじゃない。
失敗しないで上に行くなんてないじゃない。
だから、失敗してもいいんだという思いを
もっと伝えたいなと思う。
はい。
それで思い出したことが…
私、日本のスクールで教える日々を経て、
34歳の時にNYに引っ越したんです。
うんうん。
自分が教えていた演技や表現が
正しかったのか知りたくて
演技のスタジオに通い始めました。
へぇ、えらい。
いえ、全然です。
覚えているのは、クラスの初日。
20人ぐらいいたかな。
その中に50代後半ぐらいの、
バスの運転手のユニフォームを着た
体の大きな黒人の女性がいたんです。生徒として。
おー!アメリカー!
その人の19歳の娘さんも
同じクラスに生徒としているんです。
いいねーー!
私ももう30代半ばで、今さら演技なんて…
多分最年長だろうなぁ、と思っていたら。
そういう人とか、
40代のお腹の出たおじさんもいて(笑)。
うんうん。
他にも現役モデルとか、
英語の発音で苦労していたクロアチア人男性とか。
いろいろな人がいました。
 
自己紹介で、そのバスの運転手の女性が言ったんです。
 
「私は18歳の時、リー・ストラスバーグのスタジオ
のオーディションに受かりました」って。


(リー・ストラスバーグは、マーロン・ブランド、ロバート・デニーロ、
アル・パチーノ、マリリン・モンローなどを輩出したNYの「アクターズ・スタジオ」の伝説の演技指導者)

すごく淡々と話すんです。
「私はそのスクールで演技を学びはじめましたが、
But life took over(人生に逆らえなかった)」って。
あ〜。
「事情があって通えなくなったので
バスの運転手になりました。
私はもうすぐ60歳になります。
60になったらバスの運転手を引退して、
I want to be an actress」
女優になりたい、と言ったんです。
わーーーー!いいねーーー!
拍手だよ。
その場にいたみんなが拍手でした。
いい話!
希望をもらうね。
はい。
いいなぁ。
年は関係ないよ。
本当に関係がない。

いろんなものを勝手に背負ってる自分がバカみたいでした。
アメリカでマイノリティとして育つと、それはそれで
「ここまでしかできない」という
感覚が植えつけられるところがあって。
私の経験ですが。
うん。
…あのぉ、今話してて思ったんですけど。
私、どこまでコンプレックスの塊なのでしょうか(笑)。
あははは。
コンプレックスって、
私もいっぱい持ってるけど、
自分で勝手に持つものだよね(笑)。
本当ですね…

(つづきます)

第5回 言葉にするって。