もくじ
第1回出国267日目、タンザニア。 2017-04-18-Tue
第2回出国687日目、メキシコ。 2017-04-18-Tue
第3回出国765日目、アメリカ。 2017-04-18-Tue
第4回出国937日目、タジキスタン。 2017-04-18-Tue
第5回帰国407日目、日本。 2017-04-18-Tue

自然と音楽とお酒と言葉とトライアスロンと晴れの日とバンジージャンプと甘いものとキリンと祭とぶり大根が好きです。

私の好きなもの</br>生きてる感

私の好きなもの
生きてる感

担当・松谷一慶

第5回 帰国407日目、日本。

帰国して、あっという間に1年がすぎた。

考える時間は減ったけど、
誰かと話すことは増えた。
天気もそんなに気にならなくなった。
ベットで毎日寝れるし、シャワーはいつも温かい。
空腹をごまかすための塩と砂糖は、
ポケットにもう入っていない。
同じ本を繰り返し読むことはなくなって、
そのかわり、新しい映画やドラマに詳しくなった。
朝起きてオフィスに行き、帰るころには暗くなっている。
夕日のタイミングに合わせて丘に登ることは、今はもうない。

はじめにも書いたけれど、
僕が旅を1062日間も続けたのは、
「生きてる感」が好きだったから、のような気がしている。

じゃあ、旅を終えた今、
もう「生きてる感」を求めていないのかと聞かれると、
そういう訳では決してない。

確かに、ギリギリの生活をしている旅中は、
ひりつくような瞬間も多く、
刺激的で、冒険欲は満たされ、
「生きてる」と感じることは多かった。
でも、なんだかそれだけじゃないような気がしたのだ。

昔からの友人と集まる時の安心感とか、
お正月におばあちゃんと話している時の嬉しさとか、
疎ましいと思いながらもそれでも連絡を取り合う関係とか、
直前に面倒になるけど、行けばやっぱり楽しい飲み会とか、
「好きなもの」について仕事帰りの電車で考える時間とか。

日本での暮らしにはそういった、
素通りしたくないものがたくさんあって、
旅の中では見つけることのできなかったそれらを、
もっと大切に感じていきたいと、今は思っている。

今、僕はWebメディアを作る仕事をしている。
編集をしたり、新しいコンテンツを考えたり、
未経験が故に、大変だったり苦しかったりするけれど、
できあがったものを見る誰かのことを想像しながら、
試行錯誤するのはとても楽しい。

そして、この「誰かを喜ばせたい」という感覚が、
帰国を決めた理由にあたるのかなと思う。

旅の中で、新しい世界に興奮したり、
誰かの優しさに感動することは多かった。
そして、そんな毎日を繰り返す中で、
自分が積極的に影響を与える側に周りたいと思った。

見たことのない世界への挑戦や冒険の先に
「生きている」と感じる日々があったように、
見たことのない誰かとの関係や物語の先にも
「生きている」と思える日々があるような気がしている。

それを見つけることができたら、
きっと楽しいんだろうな。

(おわります)