もくじ
第1回ピアスの店員さんに声をかけてみた 2017-04-18-Tue
第2回「鮮度は、お客さんとの約束です」 2017-04-18-Tue
第3回「明け方まで、チラシ2000枚配りました」 2017-04-18-Tue
第4回「八百屋は仕事場じゃなくて、家です」 2017-04-18-Tue
第5回一生懸命なひとが好きなのだ 2017-04-18-Tue

コピーライターです。

行列のできる八百屋さん

行列のできる八百屋さん

担当・小森谷 友美

第3回 「明け方まで、チラシ2000枚配りました」

いつから八百屋の仕事をはじめたんですか?
牛島さん
もう10年前。
高校生でバイトからはじめました。
10年前ということは今は‥
牛島さん
26歳です。

(驚愕)
そんなにお若いんですね。
牛島さん
あはは、よく言われます(笑)
南平(みなみだいら)のほうにもお店があって、
最初はそっちのバイトからはじめました。
それで次は、南平店の店長をやって。
南平店の前をよく車で通るんですが、
いつも大盛況ですよね。
牛島さん
今はそうですね。
でも俺が店長になる前は、
ぜんぜんお客さんがいませんでした。
 
若かったから、お客さんから
「あんたが店長?」とか言われて全然信用されなくて。
辞めるときになって、
「店長さんだったの?」とか聞かれたりして(笑)
(笑)
牛島さん
今でもたまに南平店に顔を出すことがあるんですが、
「なんであんた帰ってこないのよ!」とか、
お客さんに言われたりします。
お客さんにすごく気に入られていたのですね!
南平店ではお客さんを集めるために、
どんなことを?
牛島さん
お客さんが全然来なかったので、
土曜日の仕事がおわってから、
明け方の4時くらいまでチラシ配っていました。
2000枚くらい、毎週ひとりでずっと。
「やっべぇ、日昇ってきた!」みたいな(笑)
 
もう値段で売るしかないなと思って、
チラシには値段をわかりやすく書いて。
人集まらないから、仕方ないですよね。

ひとりで毎週2000枚ものチラシを
配ったのですね!
牛島さん
そういうことやって頑張っていたから、
いまも店が続いて、
行列ができたりするんだろうと思います。
それくらいかな、努力したのは。ははは(笑)
でも、いままで誰もやってこなかったことだからね。
お客さんを集めるために、
ほかにも工夫したことはありますか?
牛島さん
あとは、あれだな、レシピ。
旬の野菜をつかった料理のレシピを、壁一面に貼りました。
お客さんに野菜を使って料理してもらおうって、
ネットで調べてレシピを書いて(笑)
へえ!
牛島さん
料理の写真が載った冊子をつくって。
八百屋の壁が、地元の中華料理店みたいに
たくさんの料理の写真でいっぱいになりました。
たしかに八百屋さんで今夜のおかずを決めるときに、
レシピが手元にあると助かります。
牛島さん
好きなレシピは持って帰れるようにして。
お客さんの奥さんたち、
けっこうそのレシピを取ってくれましたね。
俺が売り上げをつくるために絞り出した策は、
これくらいかなあ。
売り上げをつくるために、チラシを配ったり、
レシピを貼るアイデアを実行したり、
なかなか真似できません。
牛島さん
いやいや。
ただ「売りたい」って気持ちだけなんです。
いま、新しく青果を扱う企業もあります。
でもあまりうまく行かないことが多いのは、
「売りたい気持ち」が、
不足しているからだと思っています。
ただ棚に野菜が置いてあるだけ、
になってしまっているんです。

ただ棚に、野菜が置いてあるだけ。
牛島さん
うん。
だから生半可な気持ちで八百屋をはじめるのは
やめたほうが良いと、個人的には思っています。
「売ろう」という気持ちも、野菜の知識もなかったら、
けっきょくは野菜をむだにしちゃうから。
 
よく野菜が売れるスーパーとか八百屋は、
やっぱり店員が「売ろう」という気があるんです。
売りたい気持ちがあるから、
売れるんだと思うんですよね。

(つづきます)

第4回 「八百屋は仕事場じゃなくて、家です」