もくじ
第1回1日限りのミニ水族館。 2016-12-06-Tue
第2回「段差を埋める」ことを心がける。 2016-12-06-Tue
第3回子どもたちに背中を押されて。 2016-12-06-Tue
第4回都市の川が、自分には合ってる。 2016-12-06-Tue
第5回人と自然をもっと近くに。 2016-12-06-Tue

神戸生まれの26歳。普段は科学関係の記事を書く仕事をしています。学生時代と社会人のはじめを東京で過ごしました。2016年10月から大阪在住。

都市の川が、面白い。</br>~自然を教えるという仕事~

都市の川が、面白い。
~自然を教えるという仕事~

担当・みかんいぬ

第4回 都市の川が、自分には合ってる。

――
生き物を探しちゃう病気、ですか。(笑)
それってもう昔からっていうことですよね。
寺田
でもね、
昔に遡ると、俺も幼稚園くらいまでは
生き物が苦手だったらしいんだよ。
――
なんと、そんな時代が。(笑)
寺田
あったんだよ、あった。(笑)
うち、家は東京の江東区にあって
幼稚園くらいまではミミズも触れないような
子どもだったんだけど。
でも、おやじの田舎が長野だったんだよね。
田んぼに行ったり川に行ったりするぐらいしか
遊びがないような場所だったから、
親戚と遊んだりしてるうちに、
いつの間にか好きになった。
――
知らない間に慣れるものなんですかね。
寺田
で、それを助長したのが小学校3、4年の先生。
普通は学校に次から次へと生き物持ち込んだら
怒られるだろうけど、
「飼いたいならいくらでも持ってこい、
 その代わり自分たちで面倒を見ろ」
ってなことを言うから、
教室の3分の1くらい水槽が置いてあった。
――
そんなに!
寺田
そうそう。
川とかも危ないから他のクラスは
行くなって言われてたんだけど、
うちは自然で遊ぶことは悪くないから行っていいぞ、
って感じに言われてて。
 
結構やりたい放題やらせてくれてたよね。
それがすごい良かったのか、
なんか3、4年で生き物好きのキャラが
自分の中で確立されて。
授業中、自分の机の上にカメとか置いてたしね。(笑)
――
机にカメ(笑)
寺田
その頃の経験があるから、
多分余計に生き物が好きになったんだと思うんだよね。
でも、自分の中で
「この時に生き物好きになったな」
っていう象徴的な出来事は見当たらなくて。
「理由の無い好き」って感じなのかなあ。

寺田
子どもの頃から江東区っていう都会に住んでたから、
近所は別に自然が豊かなわけじゃなくて。
そこで無理やりドブ臭い運河でハゼ釣ったりとか、
公園の中の溝が詰まってる所があって、
そこにザリガニがたくさんいるのを見つけて
ザリガニ釣りに行ったりとかしてたな。
 
ダンプカーが走り回って
まだ何の整備もされてないお台場まで
夏休みとかはチャリで遠征していったよ。
そこでザリガニ釣ったり、
ハゼ釣ったり、
エイ捕まえたり。
当時あの辺りは野犬がいたから、
持っていったポテトチップスを
その犬に狙われながら釣るんだけど。(笑)
――
(笑)
寺田
海浜公園くらいしかないお台場に行って
ひたすら魚とったりとかしてたね。
 
ただ、そういう場所って、
最近の方がきちんと水辺の護岸が整備されてて。
人と水辺に連続性のできる場所が
うまく用意されてるんだけど、
それを使う人がいないんだよね。
――
ちゃんと配慮して作られていても
だめなんですね。
寺田
子どもの頃だったら絶対にここで遊んだよな、
っていう場所をせっかく行政の人が用意しても、
誰も使ってなかったりするから、
それがなんかすごくもったいない。
 
こういうことを話してると
どうして今の仕事をしてるのか
って話に戻ってくるよね。
 
環境学習をやって自然に興味を持つ子が増えると、
自然の今後の管理にプラスに作用していく。
そういう長い視点の部分が1つ。
純粋に、自分たちが子どもの頃
やって楽しかったことを、
やらせてあげたいっていう直感的な部分が1つ。
その2つがちょうど交差する部分が今の仕事なのかな。

――
なんか、環境学習っていうと
国立公園のレンジャーだったりとか、
山の中にいるガイドみたいな人たちを
普通思い浮かべると思うんですよね。
たとえば屋久島とかにいたりするじゃないですか。
でも、むしろ寺田さんの場合は町が舞台ですよね。
寺田
そうだね。
多分、他にそういうことやってる人が
いないなって思ったから
そこが狙い目だって思ったのもあるかな。
あとはやっぱり偶然自分が、
自然が好きなのに都会に生まれてしまった
っていう境遇だったから。
都会の中にも生き物がいるっていうのを
子供の時から気付いてたしね。
特に自然がきれいでもない場所で、
なんとか生き物を捕まえようとして
子どもの頃から過ごしてきたんだよね。
 
それが今でも勝手にできちゃうから、
逆に自然大好きな人が見向きもしない都市河川の方が、
自分に合ってて。
子供の頃から自然の中で育った人だと、
都市の自然って見つけられないと思うから。
――
あっ、なるほど。

寺田
離島とか、山もそうだけど
大自然って言われる場所はレンジャーが多すぎて
レンジャー同士で仕事を取り合う状態に
なってる所もあるんだよね。
 
でも、都市の方が人は集まるじゃない。
この横浜の町だって、
土日になると黙ってても大勢の人がやってくる。
田舎の豊かな自然の中に
自然の大好きな人が10人とか20人集まる
ビジターハウスがあったとしても、
その規模には限界があって。
今日みたいな横浜のイベントなら
自然になんか興味がなくても、
ひょっとすると1万人くらい
人が通りかかるかもしれない。
 
そうすると、
そのうちの1%でも興味を持ってくれたら、
もうそれは相当な人数に自然をPRできるんだよね。
 
それに、
自然の少ないところでひたむきに
こんな生き物が生きてるぞ、
そこにも生態系が形成されてるぞ、
ってことを伝える方が自分にはすごく面白い。
 
小さい頃から魚釣りやザリガニ釣りで
磨いてきた自分の特技も生かせるし。(笑)
 
だから、なんで今の仕事やってるのって言われると
本当に自分でもいろんな答えがあるんだけど、
逆に言うと、
多分それをやらない理由がないんだよなあ。
 
「そんな仕事で食って行けるの?」とか
よく聞かれるんだけど、
食って行けるようにするかどうかは
自分の手腕とかやり方次第だと思うから。
これをやろうって決めて職業にして、
他人に価値を見いだしてもらってお金をもらう。
そのプロセスは、どんな仕事でも同じだと思っていて。
 
だから、そうだね。
今の仕事をやってる理由、結論としては
「やらない理由がないから」なのかな。
別の言い方をすれば、
「こういう風にしたいからやってる」って、
ただそれだけかもしれない。

(つづきます)

第5回 人と自然をもっと近くに。