糸井さんと古賀さんが話す、売れるということ
第5回 規模のはなし
- 古賀
- でも、遠くの5万人とか50万人にモテてることを
喜ぶ人も確実にいますよね。
- 糸井
- それは俺の中にもあると言えばあるし、
ものすごく面白いことだと思いますよ、
何人読んでくれているって。
そこには「そんなにたくさんの人がー!?」って
嬉しさがあるじゃないですか。
古賀さん、ヒマラヤが見える場所に立ったことありますか?
- 古賀
- いや、ないです。
- 糸井
- 圧倒的な大きさのもの見たとき、
ただただ「大きいなー」って思うじゃないですか(笑)
- 古賀
- ナイアガラの滝で感じました(笑)
- 糸井
- いいですよね。
- 古賀
- いいです、いいです、うん。
- 糸井
- で、「来て良かったなー」って思うじゃないですか。
- 古賀
- 思います、思います、はい。
- 糸井
- 「もし近くに行くなら、絶対行った方がいいよ」って
人に言うじゃないですか。
あれと一緒ですよね。
- 古賀
- はああ。
- 糸井
- 俺、実は仕事でそんなもの見てないんですよ。
100万部なんてもう絶対ないし。
だから何が大きい数字かなっていうのは宿題ですね。
「登れないけど、これがエベレストの高さかぁ」って
麓で思うみたいな。

- 糸井
- 今やりかけている仕事が初めて、ビジョンとしては
億という単位で数えなきゃいけない規模なんです。
どうなるかわからいけれど、億の人がやるのを想像すると、
それはもう、ヒマラヤですよ。
しかも、仲間も一緒にヒマラヤを見られるのがいいよね。
自分が見せに連れて行ってあげ子が喜ぶのは、
自分が見る以上に嬉しいですよね。
- 古賀
- 糸井さんは、遠くの5万10万、あるいは億の人達を考える時。
「ミリオンセラーになったら1億円だな」みたいに、
お金のことを想像しますか。
- 糸井
- あのね。僕はお金に対してはちょっと警戒心があって。
ときどき、「お金好きです」って発言するようにしています。
人はお金のことをすぐに想像するので、黙っていると、
その人の小ささに合わせて想像されちゃう。
それは嫌だし、
「好きじゃないフリをしてても、実は好きじゃねえか」って
見られちゃうから。
- 古賀
- むっつりスケベみたいな(笑)
- 糸井
- そう見られるの、結構リスクなんですよね。
他人が邪魔するのに、非常に都合がいいんですよ。
- 古賀
- 邪魔するのに都合がいい?
- 糸井
- たとえば、古賀さんが考えた面白いことに、
「俺もやりたいです」「参加させてください」って来た人へ、
「それ、やればやるほど古賀さんが儲かる仕組みなんだよ」と
誰かが言ったら、動きにくくなるんですよ。
- 古賀
- そうですね、うんうん。
- 糸井
- だから、くったくなくやるためには、
「お金について僕はこう思ってて、具体的にこうなってます」
って、わりといつでも見えるようにしないと。
- 古賀
- そこには、喜びの源泉として、「おっ、1億円」とか
そういうものはあったりするんですか。
- 糸井
- それは全くないですね。
- 古賀
- ないですか。
- 糸井
- なぜかというと、僕が求めて得られるようなお金って、
ちっちゃいからですよ。
- 古賀
- (笑)
- 糸井
- どうしたってちっちゃいですよ。
町を歩くと、チンケなビルがいっぱい建ってるじゃないですか。
あれ、古賀さんのお金で建ちますか(笑)
- 古賀
- うん、建たない(笑)
- 糸井
- 前提として、チンケなビルつったでしょ。
- 古賀
- ええ(笑)。
- 糸井
- 「古賀さん、その本売れて儲かったでしょ」と言ったって、
チンケなビル以下なんですよ(笑)
- 古賀
- そうですよね、うん。
- 糸井
- まぁ、そのビルだって、お金借りて建ててるんですけど。
それにしても、何か勝負するには、僕らが稼いだお金は
やっぱりタネ銭にしかすぎないわけで。
そのくらいのお金で、持ってる・持ってないだの言うのは、
「モテちゃって大変じゃない」というのと同じような。

- 古賀
- はいはいはい。それ気づいたの、いつぐらいですか。
- 糸井
- 30代の初めぐらいですね。
20代には全く、そういうタイプのお金は見えないですから。
- 古賀
- うんうん、そうですね。
- 糸井
- となると、プロ野球選手の年俸のこととか見てても、
これ実は、使い道で言えばこんなもんなんだよねって
想像できるようになるんですよね。
そしたら、うらやましがったり、
僻んだりしてる人達が言ってることって、お門違いすぎて。
- 古賀
- うんうんうん。
- 糸井
- 会社を辞めて自分で仕事始めた人が、
どのくらい用意したかって、大体想像つくじゃないですか。
それって、大きいお金なんだけど、
やっぱり、ちっちゃいんですよ。
僕がスタートする時に、
「とにかく借りない」なんて発想しがちなのは、
「俺達が出したお金どうしてくれるんだ」って
出資者が言うかもなんて考えて不安になるから。
最初から羊羹1本もらうより
わらしべ長者の方が、やりやすいんです。
その辺りのことは、僕ちょっと先輩ぽく教えられますよ。
- 古賀
- そうですよね。でもそれと、
「じゃお金はなしでやるよ」っていうのとも、
また違いますよね。
- 糸井
- 全然違います。お金って、何だろうな。
エンジンを回す、みたいな役割があるんですよ。
でも、ちっちゃいお金でウダウダしてたら、それもできない。
自分の身の丈をよく知るというか、
自分はどこまでできて、この場合はこうするとか。
通じないかも知れない人まで、相手にしていく必要もある。
- 古賀
- そうですね、うん。
- 糸井
- 通じる人相手とずっと仕事していくと、
趣味の世界に入っちゃって、
「わからない人はいいや」となるのもよくないし。