糸井さんと古賀さんが話す、売れるということ
第2回 自分がいる業界のはなし
- 古賀
- 本のライターはどういう仕事なのか声高に言った方がいいのか、
裏方の人間として、このまま拡声器の役に徹するのがいいのか、
僕はまだちょっとわからなくて。
糸井さんが30代のころ、テレビとかメディアに出てたのは、
「コピーライター」という仕事を認知して欲しい
という意識もあったと思うんですけど。
- 糸井
- それはね、当時は自分でもよくわかってなくて。
たとえば自分が、サーカスの団長だったとして
「サーカスは面白い」って思ってもらえれば
「これからもサーカスの火を絶やさずいきたいですね。
だってサーカスって面白いですから」って、自然に言える。
サーカス業界が盛り上がってる方が、自分も上手くいきますし。
- 古賀
- そうですね。
- 糸井
- 「コピーライターという職業があって、それはすごいものだぞ」
って言ってくれるんだったら、僕も便乗して言ったけど。
でも、あのころは何だろうな、極端に追求すると
本当にコピーライターという職業のため
だったのかなと思います。
- 古賀
- それは、今振り返ってみてですか?
- 糸井
- 振り返ってです。でも、わかんないです、正直。
業界のために一生懸命な人がいるのは、ありがたいと思います。
その業界に人が入って来るもの、
ライバルを作ってるようなものですから。
お笑いの人がよく
「若手のいいやつなんか芽を摘んでやる」とか言うじゃない。
- 古賀
- はいはい、言いますね。
- 糸井
- あの方が露骨だけど、ちょっと本気な気がして。
- 古賀
- ああ、たしかに。

- 糸井
- なんでその商売やっているかって、
生まれた時から考えている人なんか、あまりいないじゃないですか。
歌舞伎の御曹司とかは別だと思いますけど。
- 古賀
- ええ、ええ、そうですね。
- 糸井
- あれは、業界が私、だからね。人生全部が、もう芸ですからね。
- 古賀
- そうだな。やっぱり僕は、つい業界のためとかって言っちゃうし
業界のこと考えちゃうんですよね。
たとえば10年前、20年前、自分が新人だったころの
格好いい先輩達みたいに、自分がなれてるか、とか。
今の50代60代に、どれぐらい格好いい人がいるかな、とか。
そう考えると、やっぱり昔の方が格好良く思えるんですよ。
- 糸井
- そうですね。
- 古賀
- そうだったとして、若くて優秀な人が、
「格好いい」「入りたい」と思う場所かなって。
たぶんネット業界とかの方がキラキラして見えると思うんです。
多少のキラキラとか、羽振りの良さみたいな演出も、
僕らみたいな立場の人間が、
多少はした方がいいのかなと若干、思うんですよね。
たとえば、サッカーの本田圭佑さんが白いスーツ着たり、
ポルシェで成田に行ったりとか…
- 糸井
- 敢えてやってますよね。
- 古賀
- そうしようと思うのは、本当に業界のことを考えてだけかと
自分を問い詰めると、
どこかにはチヤホヤして欲しいという気持ちはあって。
でも、それを良くないことと片付けるには
あまりにも勿体ない、原動力になっている。
- 糸井
- 人間じゃなくなっちゃうってとこがあるからね。
- 古賀
- はい。
だから「チヤホヤされたい」と、上手く向き合って、
下品にならないように、人を傷つけたりしないように、
自分を前に進めていくことが、
今やるべきことなのかなという気はします。
- 糸井
- 本当のことを言うと、
やるべきことなのかどうかもわからないですよね。
つまり、変なハンドル切り方してみないと
真っ直ぐが見えないみたいなとこがあって。
- 古賀
- そうですね。

- 糸井
- 今って、スタートラインに立ったらすぐリセットでゼロにして、
終わったらすぐにチェックし合う、
みたいなところあるじゃないですか。
ネットの方が華やかに見えるって言てったけど、
やってる人は、痙攣的に楽しいんじゃないですかね。
ピリピリするような。
- 古賀
- うんうんうん。
- 糸井
- 追い抜く方法を自分でわかっていながら
追い抜かれるのを待つみたいなわけじゃない。
- 古賀
- そうですね、うんうん。
- 糸井
- 僕がコピーライターしてる時も、それの浅いのはありました。
「あいつがこのぐらいのところで出してくるんだったら、
俺はそれよりずっと遠くに飛ばしちゃいたいな」とか。
でも今って、僕の時代が月刊誌の尺度で動いてたとしたら、
週刊さえ超えて、時間単位ですよね。
その単位で「俺は裏の裏まで読んでるんだ」ごっこを
ピリピリしながらやっても、何にも育たない気がする(笑)
- 古賀
- (笑)
だから、先日糸井さんが「今日のダーリン」で書いていた
「3年先のその先を思い描くから、3年先のことが話し合える」
という話。
- 糸井
- あれビリビリくるでしょ(笑)
- 古賀
- (笑)
そこの時間軸をどう設定できるかが、すごく大事で。
見えもしない10年後20年後を語りたがる人って…
- 糸井
- まずそれは嫌だね。
- 古賀
- そうですね。
そこで満足している人達というのは、
若い人達にも、ある程度年齢がいっている人達にもいて。
ほんとに今日明日しかないんだ、だってわからないじゃんって、
僕もどちらかというと、そういう立場だったんですよね。
でもそこで考えに考えたら、3年先にこっちに向かってるとか、
「あっち」とか大きなハンドルは切れるんだっていうのは、
あれは結構ビリビリきましたね(笑)
- 糸井
- それをだから、僕は今の年でわかったわけです(笑)
- 古賀
- ああ(笑)
- 糸井
- 古賀さんの年でも、わかる人はいるかも知れない。
だけど、そんなに簡単にその考えになりたくないところが
あって、たぶん抵抗するんですよね。
- 古賀
- うんうん、そうですね。