仕事が苦しい糸井さんと、辛い古賀さん。

第2回 糸井さんは「浅い目立ちたがり」
- 糸井
- 僕は、
「目立ちたいっていう願望はないんですか?」
って聞かれたら、
「ものすごくありますよ」
って言うんじゃないですかね。
ただ、ちょっと掘られたら急にどうでもよくなって、
「いや、いいかも、目立ちたくないかも」
って言うと思う(笑)。
浅い目立ちたがりなんですよ、僕、たぶん。
- 古賀
- それは、それこそ30歳ぐらいのときに、
目立って痛い目に遭った経験があるから…
- 糸井
- じゃないですね。
- 古賀
- からではなく。
- 糸井
- じゃないです。
その頃は、「たかがこんなもの」っていうのが、
ものすごく見えた感じがする。

- 糸井
- 一番目立ちたがりだったのは、
高校生のときじゃないですか。
- 古賀
- はいはい(笑)
- 糸井
- その時期っていうのは、
何をしてでも目立ちたいわけで。
みんな俺をもっと見ないかなっていう気持ちで、
服装で表現してみたり(笑)
それは動物の毛皮の色みたいなもので、
自然なことですよね。

- 古賀
- 糸井さんの中でのヒーローみたいな人達、
たとえば吉本隆明さんや矢沢永吉さんの
出版のお手伝い、
糸井さんされてきたわけじゃないですか。
そのときの糸井さんの気持ちっていうのは、
やっぱり「自分が目立ちたい」じゃなくて、
「この人の言葉を聞いてくれ」みたいな
感じなんですか?
- 糸井
- そういう本でも、「僕はとっても驚いたよ」とか、
「僕はとってもいいなと思ったよ」とかが入って、
間接話法で僕の本になるんですよね。
だから自分を前に出す必要は全くなくて。
たとえば、
「リンゴを売るのが面倒だからやめようと思うんだよね」
っていう農家に、
「俺売るから、ちょっと作ってよ」
って言う八百屋みたいな(笑)。
- 古賀
- (笑)そうですね、うんうん。

- 古賀
- 今『ほぼ日』の中で毎日のようにやっている、
「こんな面白い人がいるから、対談して紹介したいな」
とか、人の展覧会を開くとか、そういう…
- 糸井
- 場所作り。
- 古賀
- 場所を作って、その人達を紹介していく…
それが、僕が今やりたいことと
重なる部分がすごくあって。
『ほぼ日』って、糸井さんが「俺が、俺が」って
前に出てくる場所ではないじゃないですか。
それよりも、
「こんな面白い人がいてね」
って言える場所になってて。
その姿勢というのは、
昔から一貫してるのかなと。

- 糸井
- 僕みたいな加減で、
ガツガツ目立とうとしなくても、
1つの面白い世界はやれるっていうのは、
若い人達が僕を見たときに、
「ああ、あれいいな」
って思う理由の1つになってるんじゃないかな。
まだ足んないんだよって僕、
あんま思わないんですよ。
大体足りたって思うんです。