ミリオンセラーの、ほんとのところ

第2回 10年後20年後じゃなくて、3年後
- 糸井
- ほんとのこと言うと、
やるべきことなのかどうかもわからないんですよね。
ぼくはよく言うんだけど、
社内で「昔はみんな立ちションベンしてたんだよ」
って言い方して。
地方に住んでた人は、もっとですよね。
- 古賀
- そうですね。
- 糸井
- それから、今倫理的にものすごく追求されてるけど、
お妾さんのいる人とかって、いくらだっていた。
今の基準でいい悪いって言うのは簡単ですよ。
答えわかってて、その後押ししてるわけだから。
だけど、タバコ吸って、女子供のいる所で
モクモクの部屋で偉そうなことをオヤジ達がしゃべってて、
「あ、酒こぼしちゃった」なんつって、
「あらあら」なんて拭いてもらう。
ああいう時代に生きてたっていうのが、
僕の中には、まだやっぱり尻尾が付いてますからね。
だから、比べる機会がものすごく多いんですよね。
あのままそっち行ってたら、これは今袋叩きだぞと。
そんなこと山ほどあるんだけど、
今ってスタートラインリセットでゼロにして、
すぐにチェックし合うみたいなことになるじゃないですか。
歯に青のり付いてない?
みたいなとこから始まるじゃないですか。
付けちゃった方が(笑)、
青のり付けちゃった方が(笑)、
人として健全な免疫というか、
それを作れるんじゃないかなと思うんですよ。
今、ネットの方が華やかに見えるって言うけど、
あれやってる人は、痙攣的に楽しいんじゃないですかね、
楽しいとしたら。ピリピリするような。
- 古賀
- うんうんうん。
- 糸井
- やっぱり追い抜く方法を自分でわかっていながら、
追い抜かれるのを待つみたいなわけじゃない。
- 古賀
- そうですね、うんうん。
- 糸井
- 僕がコピーライターやってる時にも、
それの浅いやつはありました。
あいつがこのぐらいのところで出してくるんだったら、
俺はそれよりずっと飛んじゃいたいなとか。
でも今って、僕の時代が月刊誌の尺度で
動いてたとしたら、週刊さえ超えて、
時間単位ですよね。
1時間先の裏の裏まで読んでるんだごっこを
ピリピリしながらやっても、
何にも育たない気がする(笑)
- 古賀
- (笑)だから、先日糸井さんが
3年後の話というのを書かれてたじゃないですか。
いま現在に多少の悪影響があったとしても、
3年先で通用する、もうひとつの勝ち方を
準備しておく「勇気」が必要なのだと。
- 糸井
- あれビリビリくるでしょ。俺に来たの(笑)
- 古賀
- (笑)でもそこの時間軸をどういうふうに
設定するかというのが、すごく大事で。
見えもしない10年後20年後を語りたがる人って……。
- 糸井
- まずそれは嫌だね。
- 古賀
- そうですね、そこで満足してる人達というのは、
結構たくさんいて。若い人達にも、
ある程度年齢がいってる人達にもいて。
ほんとに今日明日しかないんだという、
だってわからないじゃんって、
僕もどちらかというと、そういう立場だったんですよね。
でもそこで考えに考えたら、
3年先にこっちに向かってるとか、
あっちに向かってるとかの大きなハンドルは
切れるんだっていうのは、
あれは結構ビリビリきましたね(笑)
- 糸井
- それをだから、ぼくは今の歳でわかったわけです(笑)
- 古賀
- ああ(笑)
- 糸井
- 例えばの話、大きな災害があった後とか、
特にああいうこともあるんだから、今日っていうのを
充実させていこうという、これ立派な考え方だと思うんですよ。
そこにしっかりと重心を置いてたら、
3年後はわからないから、今をやり残すことなく、
毎日ちゃんと生きようよというのは説得力あるんです。
- 古賀
- そうですね。
- 糸井
- たぶん僕も、本当にそう思えるようになったんじゃないかな。
それを繰り返していったら、
「どうしましょう?」って聞かれることが
多くなるじゃないですか。
「俺もわかんないけど……」っていうのを、
ずっと言ってきたけど、3年前からしたら、
今日ぐらいのところはわかってたなっていうことを
思うようになったんですよ。
- 古賀
- はいはいはい。それってあれですか、震災とか
気仙沼に関わるようになったというのは関係してますか。
- 糸井
- 震災はでかいですね。震災でかいです。