もくじ
第1回(プロローグ)偏食なのに 2016-06-28-Tue
第2回バターロールとカラス 2016-06-28-Tue
第3回ピザを注文したいだけ 2016-06-28-Tue
第4回うみたてたまごと、しお 2016-06-28-Tue
第5回青いうみたてたまご 2016-06-28-Tue
第6回「クッキー」にまつわる、にくい話 2016-06-28-Tue
第7回2ドルの「しお」と、良心 2016-06-28-Tue
第8回グルメ旅行のお土産品 2016-06-28-Tue
第9回ポーキーとプリン 2016-06-28-Tue
第10回(エピローグ)プレイ日記と食べ物日記 2016-06-28-Tue

ライター、ルポエッセイスト/著書『「ぼっち」の歩き方』、『ひとりっ子の頭ん中』/Twitter @moyomoyomoyo

『MOTHER2』グルメの旅

担当・朝井麻由美

第7回 2ドルの「しお」と、良心

 このゲームは、本筋と関係ないところで
良心を試されることが何度もある。
「ウィンターズ」での「クッキー」の件もそのひとつ。
「ハッピーハッピー村」では
「バナナ」と「うみたてたまご」を売っている
無人販売所がある。
「バナナ」は5ドル、
「うみたてたまご」は12ドルだが、
お金を置いていかなくても買えてしまうのだ。
すべてを記号として、ゲームとして考えてしまえば、
ここで「うみたてたまご」を買ってお金を払わず、
にわとりに成長させて、にわとりを売る、
なんてこともできてしまう。
にわとりは一羽110ドルで売れるため、
うみたてたまごを養鶏場よろしく
いくつもにわとりにすれば、結構な稼ぎとなる。
だからこそ、この無人販売所に「うみたてたまご」が
置かれているのだろう。
良心と110ドル、
どちらが高いのかを問われているようだ。
ただ食べ物を無人販売所で売るだけなら、
似たような回復量の「クロワッサン」や
「えんそくランチ」でもよかったはず。

 「フォーサイド」の街では、
とある事件についての話を聞くために、
食べ物を何かあげなければならない場面がある。
野次馬に囲まれていて通れないところを、
「なんかくれたら場所を
ゆずってやるけどよ。くれるか?」
と野次馬のひとりに言われるのだ。
食べ物ならたくさん持っている。
でもそれは、「えんそくランチ」だったり、
「ハンバーガー」だったり、
どれもこれも体力を回復するために
持ち歩いているものだ。
これをあげてしまえば、あとで回復手段がなくて
困ってしまうかもしれない。
それに、買うとそれなりに高いし……。
迷った挙句、私は「しお」をあげた。
わざわざ買いに行って、2ドルの「しお」をあげた。
“あじつけこもの”の店には、
4ドルの「コンデンスミルク」も、
3ドルの「こなざとう」も売っていたけど、
私は2ドルの「しお」を選んだ。
食べるとHPを6回復する「しお」を。
リュックサックに入れてあった「えんそくランチ」は
HPを84回復する。
食べ物をくれ、と言ってきたあの人は、
毎日の食事をまともに買うお金すらなさそうな風貌だった。
そんな人に渡すのは、「しお」でよかったのだろうか。
ああ、また、「ウィンターズ」の寄宿舎のときと同じだ。
世界の平和を背負っているから……そう言い訳して、
ずるいことをしてしまった。

(続きます。次は「グルメ旅行のお土産品」)

第8回 グルメ旅行のお土産品