堀江貴文さんの、 まじめなおせっかい。  「もっとこうすればいいのに、と思うんです」
堀江貴文さんと糸井重里の対談です。 2013年11月に出版された堀江さんの本、 『ゼロ』について触れながら ふたりの会話は終始なごやかに、かろやかにすすみました。 ライブドアのこと、近鉄バファローズ買収のこと、 ヒッチハイクの経験談(!)などをうかがううちに、 「どうやら堀江さんはおせっかい」 という傾向を糸井が見つけます。 その「おせっかい」は、とてもまじめで、本気で‥‥。 「CAKES」さんとの共同企画で実現した対談。 どうぞ、おたのしみください。
第1回 いまが会うタイミング。
糸井 堀江さんの『ゼロ』という本、
じつは「cakes(ケイクス)」に
ゼロ章が公開されたときにも
ちょっとだけ読ませていただいてたんですよ。
堀江 そうなんですか? ありがたいです。
糸井 ぼくのまわりにも読んでるひとがいっぱいいて。
読者の方からも
「堀江さんと対談されたらいかがですか?」
というご提案があったりしました。
堀江 そうなんですか、うれしいです。
糸井 本になってからも読ませていただきました。
おもしろかったです。
堀江 ありがとうございます。
おかげさまで書評がどんどん出はじめている感じで。
糸井 そうでしょうね、
そうだと思いますよ。
堀江 内容には自信があったんですけど、
はたして広がっていくのかというのが、
ちょっとぼくの中では、やっぱり不安だったんです。
糸井 速度はどうでもいいやって思っちゃったら、
ぜんぜん心配ないんじゃないですか。
「この本は売れます」とぼくは思う。
最初の勢いで売っちゃう本じゃなくって、
ちゃんとロングセラーになるんじゃないでしょうか。
堀江 いままでのぼくの本も
時事的なものってそんなになくて、
普遍的なことを書いてきたつもりなんです。
でも、なかなか難しくて。
糸井 そうですか、
そう受けとめられるとは限らなかった。
堀江 ええ。
だからぼくはこれを書くにあたって、
過去のベストセラーや
ロングセラーの作品をいろいろと読んでみたんですよ。
ベストセラーってどんな本なんだろう? って。
刑務所にいたとき、
水野敬也くんが本を差し入れしてくれたんです。
あの、『夢をかなえるゾウ』の。
糸井 はいはい、水野さん(笑)。
堀江 彼もそういうことをすごく考えていますよね。
実際、彼の本は売れていますし。
糸井 売ることをほんと真剣に考えてるから、
打席に立ってる数も相当なものでしょう。
堀江 彼とは同じ雑誌に連載していて知り合ったんですけど、
ある日「遊びにきてください」っていうから
家に行ったんですよ。
そしたら、本棚が当時出たばっかりの
ぼくの本で埋めつくされていて。
糸井 やったなぁ!(笑)
堀江 そりゃ驚きましたけど、
「どうすんの、これ?」って(笑)。
糸井 うーん、やるなあ(笑)。
堀江 そんな彼が刑務所に差し入れてくれたのが、
黒柳徹子さんの『窓際のトットちゃん』、
乙武洋匡さんの『五体不満足』、
飯島愛さんの『PLATONIC SEX』。
糸井 はい、はい。
堀江 そして矢沢永吉さんの『成りあがり』。
糸井 おお(笑)。
堀江 知らなかったんですけど、
あれは糸井さんの仕事だったんですね。
あの語りかけてくる感じ。
糸井さんがいたからこそ、
ああいう本になったんだろうなって。
糸井 合いの手があってこそ、
というところはありますよね。
でも、この『ゼロ』もそうでしょ?
堀江 そうですね。
糸井 やっぱり合いの手がないと、
自分としてはあんなふうに語るつもりがないから。
『ゼロ』の構造は、
『成りあがり』だなあと思いましたよ。
堀江 おもしろかったです、『成りあがり』。
糸井 おもしろいですよね。
それは矢沢永吉という人が
全身で生きている人だからです。
いまだにそうですよ。
堀江 あと、何年か前にほぼ日でやられていた
『はたらきたい。』の矢沢さんとの対談も。
あれなんか、まさに
『ゼロ』のテーマとも重なると思いました。
糸井 おんなじ話をしてますよね。
『ゼロ』を読んで「おなじじゃん!」って思いました。
それでぼくも、
いまのタイミングってすごくいいなと思ったんです。
最初にもいいましたが、
読者の方から「堀江さんと対談されたら?」
ということもあったりして、
いまのタイミングってすごくいいなあ、と。
堀江 はい。
糸井 「評価しなきゃいけない状況」で
誰かと会うのって、ぼくは苦手なんですよ。
たとえば堀江貴文というひとと会うときに
「それであなたは堀江さんを支持してるの?
 してないの?」
と迫られるタイミングってあるじゃないですか。
「好きなの? 嫌いなの?」みたいな。
堀江 ええ、ええ。
糸井 みんなが堀江貴文という人物を通して
「自分」を表明しているんですよね。
ぼくはどうもそれが苦手で、
会うことが評価になりそうなときは
それが冷めるまで待つんです。
で、いまだったらちょうど平熱というか、
評価する必要のない堀江さんに会えると思って。
読者もそういうふうに感じ取っているようだし。
堀江 なるほど。
糸井 正直、あの「想定内」とか
「想定外」とかいってたころには、
このひとについてなにかいわされるのはいやだな
と思ってましたから(笑)。
堀江 ははははは。
糸井 だって、わからないじゃないですか。
編集されてコラージュされた情報だけが
届いちゃったりするから。
その状況で「ホリエモン、いいんじゃない?」
っていうのも違うし、
「ホリエモン、やだね」っていうのも違うし。
堀江 たしかに、
ステレオタイプな見方を
さんざんやられていましたね。
糸井 だから、いまお会いするっていうのは、
いいタイミングなんだなぁと。
堀江 ええ。
(つづきます)
014-01-23-THU
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第1回 いまが会うタイミング。 2014-01-23-THU
第2回 みんなそこまでがまんすることないのに。 2014-01-24-FRI
第3回 ブランドの価値、無料のアイデア。 2014-01-27-MON
第4回 スティーブ・ジョブズに会っとけばよかった。 2014-01-28-TUE
第5回 堀江さんの、まじめなおせっかい。 2014-01-29-WED
第6回 逃げるひと、逃げないひと。 2014-01-30-THU
第7回 刑務所でのこと。 2014-01-31-FRI
最終回 そのおせっかいは、宇宙へ。 2014-02-03-MON
 



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この対談を別編集でお読みいただけます。

『ひとを幸せにする本気の”おせっかい”
     ――糸井重里×堀江貴文対談』

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(C) HOBO NIKKAN ITOI SHINBUN