堀江貴文さんの、 まじめなおせっかい。  「もっとこうすればいいのに、と思うんです」
堀江貴文さんと糸井重里の対談です。 2013年11月に出版された堀江さんの本、 『ゼロ』について触れながら ふたりの会話は終始なごやかに、かろやかにすすみました。 ライブドアのこと、近鉄バファローズ買収のこと、 ヒッチハイクの経験談(!)などをうかがううちに、 「どうやら堀江さんはおせっかい」 という傾向を糸井が見つけます。 その「おせっかい」は、とてもまじめで、本気で‥‥。 「CAKES」さんとの共同企画で実現した対談。 どうぞ、おたのしみください。
第6回 逃げるひと、逃げないひと。
糸井 堀江さんの本を読みながら、
「人って、似てるところと
 似てないところがあるんだなぁ」って思って。
堀江 ええ。
糸井 読む前は自分と堀江さんの似てるところなんて
想像もつかなかったんだけど、
読んでいくといっぱい似てるんですよ。
堀江 あ、そうでしたか。
糸井 とくに「おせっかい」については、
ぼくにもまったく同じところがあります。
堀江 糸井さんも。
糸井 おせっかいですね。
そこは堀江さんに似てると思います。
で、堀江さんと似てないところは、
ぼくは逃げるんですよ。
堀江 逃げる。
糸井 『ゼロ』に書いてましたけど、
堀江さんはいやいやながらも小学校の6年間、
柔道の道場に通った人ですよね。
堀江 はい。親に言われて。
糸井 ぼくはそういうことから逃げてきた人なんです。
堀江 それって、ぼくには無理だったんですよ。
親が確実に許さなかったんで。
逃げるという選択肢はありませんでした。
糸井 そこがやっぱり、いちばんの違いですよね。
ぼくは、ぜんぶ逃げようとするんです。
「その逃げ足がぼくを鍛えた」
と思ってるくらいで。
いちばん大きかったのは、
学生運動から逃げたことでしたね。
「こっちに行ったら変になる」と気づいてからは、
もう、必死で逃げましたから。
堀江 糸井さんって学生運動の世代なんですか?
糸井 はい。ぼく65歳ですから。
25歳違うんですよ、堀江さんと。
堀江 学生運動の世代ですかぁ。
うちの母親と同じくらいですかね。
母は1950年生まれなんですけど。
糸井 ぼくはそれより2つ上です。
堀江 ああー、同じぐらいですね。
糸井 ですから、なんていうんでしょう‥‥
「ひとは、ほんとにいやなことはしない」
という根本的な人間観が、ぼくにはあるんです。
命令やルールだけで
生きているひとなんかいない、と。
いやなことからものすごく逃げ回って、
いやなことをしない人生を送ってきたぼくだから、
そういうふうに思うんです。
ところが、どうやら堀江さんはぜんぶ逃げなかった。
堀江 いやなこと、できますね。
なんか、目の前にある「いやなこと」を
「いやじゃないこと」に変えていく努力をします。
糸井 そうなんですよね。
本を読んで知りました。
堀江 「どうしてもいやなことをしなきゃいけない」
っていう場面‥‥
それこそ刑務所に入るようなシチュエーションは
だれにでも起こりえるわけで、
そこでは「いやなことを楽しむ」能力が
必要じゃないかと思うんですよ。
糸井 要するに変換する能力ってことですよね。
思えばそれを、みごとにぜんぶやってましたよね。
だってライブドアが騒動になって、
想定内だ想定外だっていってたときも、
「いやなこと言うなぁ」という質問にも
正面から答えて、「試合」をしてたじゃないですか。
堀江 はい。
糸井 あれはぼく、できない。
ぼくだったら逃げちゃうもの。
ツイッターでもすぐにブロックしちゃうし。
堀江 ぼくはブロックしたことないんですよ。
そこはまさにノイズだと思っていて。
ノイズを取り入れたいし、ノイズがおもしろいんで。
糸井 すごいなぁ、才能ですね。
試合でしょ? いわば。
堀江 異種格闘技戦みたいなところはありますね。
糸井 そこがおもしろいんだよなぁ。
だからこそ、
ホリエモンのファンって多かったんだと思う。
戦線を縮小しなかったから。
堀江 戦線、縮小しなかったですね。
糸井 今朝も家で、
「きょうホリエモンと会うんだ」っていったんですよ。
そしたらかみさんが、
「へぇー」って興味深そうにしてるんです。
その反応がおもしろかったから、
「そんなふうに反応すること、あんまりないよね」
っていったら、
「だって、きょうはこの人に会うんだなんて、
 ふだんはいわないじゃない」って返されました。
堀江 へえー。
糸井 そのとき、
「あ、ホリエモンってスターなんだ」
と気づいたんですよ。
堀江 スター、ですか?
糸井 うん。それは堀江さんが逃げなかったから。
逃げた人はスターじゃないもん。

『ゼロ』に書いてありましたけど、
拘置所に届けられたライブドアの社員たちからの
応援メッセージの話は、すばらしいですよね。
かつての仲間たちから
悪い声が聞こえてこないって、すごいと思いました。
堀江 ああ‥‥はい。
ぼくのことを恨みたくなる社員がいても
仕方ないと思っていたのに、
みんなが熱いメッセージを色紙に書いてくれて。
糸井 申し訳ないけどあの騒動のときは、
仲間内から悪くいわれるんだろうなと、
ぼくは漠然と思ってました。
ところが、社員たちはみな信じて応援していた。
やっぱりスターですよ。
堀江 あれは‥‥うれしかったですね。
慕われています、ウザイくらいに(笑)。
糸井 おせっかいなことをたくさんしたのに!(笑)
堀江 そうですよね、
相当なおせっかいをしたのに(笑)。
糸井 ぼくがおせっかいみたいなことをしてた相手に
みうらじゅんがいるんですけど。
堀江 はい、みうらさん。
糸井 ぼくが彼にしてたおせっかいは本気じゃないんです。
「本人はいやかもしれないな」
というからかいがちょっとまじってますから。
堀江 ああー、その意味では、
ぼくはかなり本気でおせっかいをしてますね。
糸井 堀江さん、みうらじゅんには?
堀江 15年くらい前にお会いしたことがあるんですよ。
みうらさんにいわれたこと、いまでも覚えてます。
糸井 なにをいってたの?
堀江 「インターネットにアクセスするっていうけど、
 おれ、インターネットに
 あくせくするだと思ってたんだよね。
 なんでみんな、あくせくしてんだろう?」って。
一同 (笑)
糸井 ぼくが知ってるみうらの実話に
こんなのがあります。
はじめてファクシミリが入ってきたとき、
みうらは電話口で一所懸命、声を出していた。
堀江 え?
糸井 「もしもーし、みうらですー」って。
その声が電話の向こうで紙になって出るんだと
本気で思ってたの(笑)。
一同 (爆笑)
(つづきます)
2014-01-30-THU
まえへ このコンテンツのトップへ つぎへ
(C) HOBO NIKKAN ITOI SHINBUN