怪・その34

「頭を撫でる手」



これは、私の母が高校生のころの話です。

そのころの母は体調を崩すことが多く、
よく頭痛を訴えていたそうです。

その日も母は酷い頭痛に襲われ、
部屋でひとりで寝ていました。

痛みと格闘し、
ようやく眠くなってきたというときに、
誰かが自分の頭を
優しく撫でているのに気付きました。

怖い感じはまったくなく、優しい手だったといいます。

母は、きっと母の母(私の祖母)が心配して
頭を撫でてくれているのだと思い、
安心してそのまま朝まで眠ってしまったそうです。

翌朝すっかり痛みが引いたので、
祖母に

「昨日の夜、私の頭を撫でてくれたでしょ?」

と尋ねると、祖母は不思議そうな顔をして、

「昨日の夜はあんたの部屋へは行っていないよ。
夢でも見たんじゃないの?」

と言い、
まったく取り合ってくれませんでした。

それから母の頭痛はぱたりとおさまり、
痛みでうなされる夜もなくなったそうです。

あの夜に母の頭を撫でてくれた手は、
いったい誰のものだったのでしょうか。

ちなみに今の私は、あのころの母と同じ高校生。
母が使っていた部屋で寝ています。
ですが、いまだに誰かに
頭を撫でてもらったことはありません。

(ha)

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2023-08-27-SUN