怪・その31
「夜勤でよくある」
私が病院勤務看護師だった頃、
25年も前の事です。
当時新人で、三交代勤務の深夜勤帯を
任されるようになったばかりでした。
夜勤は2人体制、
途中1時間半位ずつ交代で仮眠休憩、
その間は1人で待機、
ラウンド(病棟見回り)します。
ナースステーションと病室から
トイレへの通路は、
アコーディオンカーテンで仕切られており、
下が15cmほど開いていました。
浴衣を着て裸足にスリッパの足が、
トイレの方へ歩いて行くのが見え
「402号室の患者さんがトイレに行った」と
特に気に留めずいました。
しばらくして、
ナースステーションのガラス越しに
男性の患者さん(403号室の◯◯さん)が、
笑顔で会釈して通り過ぎました。
夜勤者に会釈して
トイレへ行かれる患者さんは多いので、
これも気に留めず。
休憩から戻った先輩ナースに報告しました。
「402の患者さん、トイレに行っています。
403の◯◯さんは、会釈して通られました。
トイレから戻られたようです」
先輩は怪訝な顔で
「402は今空き部屋、
トイレ行くのに通路通る方はいないはず。
403の◯◯さんって、
今日日勤帯で、
あなたがお看取りした方でしょう!」
そうでした、
アコーディオンカーテン越しの
通路の向こうの病室は空き部屋、
それに浴衣をお召しの患者さんは
当時いらっしゃいませんでした。
そして◯◯さんは、
私がその日、
初めてお看取りさせていただいた方でした。
「お礼言いにみえたんじゃない?」
と先輩に言われ、
怖いどころか、ありがたく感じました。
他にも、誰も呼んでいないのに
4階までエレベーターが上がってきて、
ドアを開けてしばらく止まっていることが
度々あり、
「また誰かのお迎えだね」。
たいてい、次の勤務帯でお看取りが…。
不思議と怖くはないんですけどね、
看護師あるあるだと思います。
(y)