怪・その44

「私と壁の間に」



10年以上前に
月1で通っていたマッサージ店での体験です。

当時、私もセラピストも共に30代、
マッサージ中もしゃべってばかりでした。

その日は夏でしたので、話は「怖い話」。

あの橋はヤバイとか、
あの病院にはこんな話があるとか
けっこう盛り上がっていました。

そして有名なトンネルの話になりました。
戦争中は防空壕の代わりにもなっていたと聞いています。
そのトンネルについて、
お互いの知人の体験談になり、
バックミラーを見てはいけないとか、
知人の体をバイクに乗った人がすり抜けたとか、
話も具体的になっていきました。

その頃から、フローリングが
ピシッピシッと音を立てるようになり、
セラピストと私は、アイコンタクトで
「おかしいね」という感覚を伝え合いましたが、

その直後のことです。

壁を背にして横たわっている私と壁の間に
髪の長い痩せた女の人がいるのです。

見えないけれど立っているのです。

私の左腕を両手でつかもうとしているのです。

二人同時に部屋の反対側に走って逃げました。

つかまれていたら、どうなったのでしょう。
おもしろ半分で怪談話をしたことを
懲らしめに来たのでしょうか。
(みどりのり)

こわいね!
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