怪・その43

「お清めの塩」



上の娘がまだ2歳頃のことです。

主人の仕事関連のお葬式があり、
この頃はよく主人が通夜や葬儀に参列していました。

タイミングなのか、
当時ブラック企業だったのかは分かりませんが、
取引先や仕事場の方が立て続けに亡くなることがあり、
体調を崩してしまう社員もいることをよく聞いては、
主人のことを心配したものでした。

その日も、仕事場の方の通夜だったと思います。
夜遅くに帰ってきていたので。

私は早々に娘を寝かし付けて、
自分もウトウトしながら主人の帰りを待っていました。

夜の9時くらいでしょうか。
半分夢現つの中で、
主人が玄関を開けて帰宅したのが分かって、
「おかえり〜」
と、声を出したつもりでしたが、声が出ず。

「あれ?」
と思っていた時に、
隣で寝ている娘が顔だけこちらに向けました。

その顔を見てギョッとしたのを今でも覚えています。

寝ている筈の娘の目が白目にカッと見開いて、
にた〜っと何とも薄気味悪く笑っているのです。

「いかん!! 娘ちゃんはいかん!! 渡さんで!!」

と大声で叫びました。

何だか、
そう言わないといけないという気持ちと、
何とも腹立たしい気持ちでした。

それでも、娘の何かはニタニタと、
いやらしい薄気味悪い笑顔をやめません。

これはダメだ、と飛び起きると、
主人が喪服の背広を脱ごうとしているところで、

「あれ、起こしちゃった?」

とビックリした顔で聞いてきました。

「パパ、清めてから帰ってきた?!」

私に聞かれて、ハッとした顔をする主人。

「バカ! 一緒に連れてきちょる!!」
 早く塩振るよ!!」

と私に捲し立てられ、
すごすごと玄関の外へ出て、
頭から塩をぶっかけられた主人。

車も、玄関も部屋も塩まみれになったのですが、
興奮していた私に鬼気迫るものがあったらしく、
主人は怯えて何も言えなかったと、
後日言われてしまいました。

一方の娘ですが、私が飛び起きた時には、
可愛い寝顔ですーすーと寝息を立てて寝ていました。

特に何もありません。
あの顔は、私が夢の中で見た
悪い何かだっただけのようで、
心底ホッとしたのでした。

この時の一件以来、
主人が浄めの塩の大事さを感じたそうで、
葬儀や通夜の際には
欠かさず塩をかけるようになりました。

あの時の娘に何が悪さをしようとしていたのか、
私のただの夢見が悪かっただけなのか、
結局のところ、何も分かりません。

でも可愛い我が子に悪さをするヤツは、
絶対に許さないと、
あらためて思う母ちゃんです。
(肝っ玉母ちゃん)

こわいね!
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