怪・その37

「地元の噂」



これは約30年前、わたしが若かりし頃。

地元の駅前一等地に
某百貨店が建つことになりました。

建設予定地は、
長い歴史がある大きなお寺がある所で、
約20年程も立ち退き交渉をしていたそうです。

いざ工事が始まると、
昔の土葬された人骨が
たくさん出てきたそうで、
工事中もケガ人が多く、
完成も一ヶ月程遅れました。

地元では早々に
「出る」と噂になっていました。

特に「地下は出る」と。

わたしはこの百貨店に入るため
転職していたので、
立ち上げから5年間勤めましたが、
本当にいろんなことがありました。

霊感の強い人は
早々に何人も辞めたと聞きました。

月に一度、売り場でミーティングがあり、
その日はわたしは早番だったので、
一度家に帰り、車で向かいました。

地下の駐車場に車を止めて
ミーティングへ。

ミーティングが終わったのが
22時くらいだったでしょうか。

レストラン街がまだ営業していたので、
駐車場にはまだたくさん
車が止まっていました。

トイレに行って帰ろうと思い、
トイレに向かいました。

普段は客用のトイレに入ることはないので、
初めて地下のトイレに入りました。

個室が二つあり、
ひとつはドアが閉まっています。

わたしがもうひとつの方に入っている間、
誰か入っているはずの隣からは
何の物音もしません。

が、トイレに入っている間中、
ものすごく見られている感じがするんです。

すごく落ち着かなくて、
ドアの下の隙間や、
ドアの上をキョロキョロと
何度も見ながら用を足し、
急いで車に向かいました。

次の日、出勤して、
昨夜のことを同僚に話したところ、

「よく一人でトイレに行ったね。
ドアひとつ閉まってたやろ?
あんまり出るんで封鎖したんよ」

と言われ絶句しました‥‥。

あれから30年、
あの建物は経営が何度も代わり、
好立地にもかかわらずパッとしません。

先日買い物に行った時、
あの地下のトイレに入ったのですが、
もう封鎖はされていませんでした。

地元では「出る」とは
さすが聞かなくてなりましたが、
「出なくなった」とも聞かないですね。

(たんぽぽ)

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2022-08-29-MON