怪・その36

「余所者を嫌う町」



もう30年程昔の話です。

バブルで景気が良く、浮かれた両親は
子供に相談なく
山の中腹の古民家を衝動買いしました。

最寄り駅と言える駅もなく、
バス停までも歩いて30分、
大学生だった兄妹3人、
帰省の時だけだから仕方ないか‥‥、くらいで
正直どうしてそんな田舎に引っ越したんだと
有り難くありませんでした。

ある夏休み、
1階の16畳ほどの続き和室に母といると、
2階をドスンドスン歩く音がしました。

歩幅もわかるほど、大きな音でした。

お父さんうるさいねーと話していたら、
1階の奥から父がひょっこり出てきました。
ずっと別室にいて、2階には上がっていないと。

泥棒かと青ざめ、
父に2階の様子を見てもらいましたが
誰もおらず。

その時気がつきました。

2階の間取りでは、
続き和室の上は2部屋に区切られていて
間に壁があることを。

壁を通り抜けて歩いていた何かがいたことを。

父は気のせいだと全く本気にしませんでした。
でも、私と母は

「なんとなく、あの足音は怒ってる感じがした。
余所者が古い町に入り込んで
この家のご先祖は怒ってるんじゃないか」

と話したものです。

その後、5年の間に
我が家では兄が難病発症、
父は病気で60で亡くなりました。
会社もつぶれて
ほぼ夜逃げの様に
その家を後にすることになりました。

10年ほどして知り合った新しい友人のご家族も
ほぼ同時期にその田舎町に引っ越して
数年暮らしたそうですが、
ご兄弟2人がうちの兄と同じ難病を
発症したそうです。

友人は家族と折り合いが悪かったため、
一度もその町に行ったことはなかったそうです。

やはり、余所者を嫌う何かがあったのでしょうか。
私も、決して、
今後一生あの町には足を踏み入れません。
(m)

こわいね!
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