怪・その30

「居間を通って」



20数年前の話です。

母方の祖父が亡くなり、
通夜・葬儀を終え、
母は初七日や後片付けがあるので
伯母たちと残るため、
父と弟と3人で自宅に帰ってきました。

次の日の朝、居間に顔を出すと、父が
「昨夜、階下に降りてきたか?」
と聞いてきます。

「降りてない」というと
歯切れが悪く「そうか‥‥」と
黙り込みました。

しばらくして居間に入ってきた弟にも
同じことを聞き、
弟も「降りてない」と言います。

父にどうしたのか聞くと、
夜中に誰かが
台所で水を飲んでいたというのです。

当時、2階の二部屋それぞれを
弟とわたしが自室として使用し、
両親は1階の居間を
寝室を兼ねて使用していました。

台所へは、居間を通るか、
居間へ入らず脱衣所を回って入るか、
どちらかしかありません。

夜中、寝ている父の横を
「〇〇(父の名前)さん、暑いねぇ」
と言って、台所の流しに歩いて行った
「もの」がいた‥‥と。

しかも父が見たのは
白いズボン下を穿いた
腰から下しか見えておらず、
でも声は亡くなった祖父のものだった‥‥と。

それを聞いて
「おじいちゃん、ついてきたんだなぁ」
と思いました。

父は特別信心深いわけでも
だからと言って祖先を軽んじる人でもなく、
ありのままを受け止める人ですが、
さすがに気味が悪かったようです。
(吹雪)

こわいね!
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2022-08-22-MON