怪・その29

「黄色いTシャツ」



私が小学生の頃、
夏は玄関も家中の扉も窓も開けっ放しで、
近所の友達も
気安く家の中に上がって来るという
呑気な時代の不思議な話です。

ある夏休みの朝、
子供部屋にいた私が
後方に気配を感じ振り返ると、

廊下を挟んだ向こうの部屋の襖から、
半分くらい顔を覗かせた
黄色いTシャツで
半ズボンの男の子が見えました。

背格好から、
友達の弟がひとりで遊びに来たのかと、
深く考えず机に向き直しましたが、
部屋に入ってくる様子がなく
振り向くと姿はありませんでした。

「帰ったんだな。
私から声を掛けてあげれば良かったな」
とその時は思いました。

それから何日か経った昼下がり、
子供部屋の前を通りかかった時、
部屋の真ん中に
先日と同じ服装の男の子が
座っているのが見えたので、
えっ? と見返すと、姿はありません。

見間違い?
いやいや片膝立ててたし‥‥。

何日かモヤモヤした気持ちで過ごした後、
母に
「こういう事があってね」
と話したところ、

母が
「この間、夜中に目が覚めたら、
開いた窓の所に
黄色いTシャツ半ズボンの男の子が座って、
じーっと私を見下ろしていたので、
あんた誰? と聞いたら、
いきなり布団に飛び降りて来たので、
うわぁと跳ね起きて‥‥目が覚めた」
と言うのです。

それ、本当に夢だったんだよね?
(k)

こわいね!
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2022-08-22-MON