怪・その28
「お手々がいっぱい」
今19歳の姪(妹の子)が
3歳ぐらいのときのことです。
姪の夏風邪がなかなか治らない、と
妹から聞いていたのですが、
結局こじらせて、
入院ということになりました。
姪っ子が入院したのは、
我が子も当時よくお世話になっていた、
昔からある地元の総合病院。
建物は少し古いものでしたが、
信頼できる小児科のドクターがおられて
人気でした。
入院治療のおかげで、
姪っ子は順調に回復して、
普段のおしゃべりな子どもに戻って、
退院する日も近づいていた、
そんなある日。
祖父母(わたしの両親)が
孫のお見舞いに訪れました。
久しぶりにおじいちゃん、
おばあちゃんに会えて、はしゃぐ姪っこ。
孫の元気な様子を見守る祖父母。
病室はとても和やかな雰囲気だったと
妹は言っていました。
そのとき、突然、
「おじいちゃん、
お手々がいっぱいあるね~!
ほら~たくさん、たくさん」
と、病室の壁を背にして置かれたソファに
座っていた父の肩のあたり、
顔の周りあたりを指差しながら、
嬉しそうに満面の笑顔で
姪っ子が言ったそうです。
もちろん、その、たくさんの手は
姪以外には見えなくて。
一同、固まったそうです。
その後、何事もなく姪は退院して、
周りに手があった(?)父も、
同席していた母も妹も元気です。
幼い姪に見えた
たくさんの「お手々」は
なんだったのでしょうね。
(見えない人)