怪・その25

「聞こえてくる悲鳴」



初夏に入る少し前の出来事です。

私は、いつものように
就寝前の日課であるストレッチを
リビングでしていました。

ちょうど夜中の0時を過ぎた頃、
ひと汗流そうと1階のリビングから出ようとした時、
自宅の外で誰かの声がかすかに聞こえました。

閑静な住宅街に囲まれ、
いつも夜中は静かなので珍しいなと思い、
少し聞き耳を立てたのを覚えています。

その声は女性で、
自宅のすぐ傍の道路から聞こえました。

最初何を言っているのか分からなかったのですが、
そのか細い声が、突如大きな悲鳴に変わりました。

誰か助けてェーー!!!

耳をビリビリとつんざくような悲鳴が
突如聞こえたので、
驚いた私はリビングの道路側にある
すりガラスの窓を見たのです。

車のヘッドライトが
すごいスピードで横切るのを目撃した直後、

痛い痛い痛い痛イ痛イ!!

自宅の壁を飛び越えて聞こえてくる
女性の悲痛な叫び声に、
腰を抜かした私は、
パニックになりながらも警察に通報しようと
携帯を探していました。

2階の寝室に携帯があることを思い出した私は、
四つん這いになりながら階段を駆け上がり、
ベッドサイドにあった携帯を震える手で取りました。

しかし、私が寝室に着く頃には、
あんなに聴こえていた女性の声が、
もう外から聞こえないことに気づいたのです。

2階の寝室にも道路側に窓が付いているので、
恐怖に駆り立てられながらも、
カーテンを捲り外の様子を伺うことにしました。

街灯で照らし出された道路には、
声の主である女性も、車の姿もなく、
ただ不気味に静まり返る住宅街の姿しか
見えませんでした‥‥。

その後、布団に入っても当然寝られるはずもなく、
一緒に怯えていた猫を宥めながら朝を迎えました。

ゴミ捨てに行きがてら、
昨夜の事件の痕跡を調べてみましたが、
血痕もタイヤ痕もありません。

昨夜のことを近隣の住人にも聞きましたが、
あんなに悲鳴が聞こえていたにもかかわらず、
首を傾げられたり、
気味悪がられたりするだけでした。

自宅の玄関に設置している防犯カメラの映像も
念のため確認しましたが、
私が悲鳴を聞いた同時刻頃に
お隣に住んでいる男性が
何事もなく自転車で帰宅する姿が
写っているだけでした。

今となっては、
あの女性の声や車のライトは夢だったのか、
幻だったのかは私には判断がつきません。

ただ、あの悲鳴を私と一緒になって聞き、
酷く怯えていた飼い猫がいることは事実です。
(Kazz)

こわいね!
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2022-08-20-SAT