怪・その13

「階段を上がってくる」



私が高校生、弟が中学生の頃でしたか。

朝も夜も懸命に働く母の帰りが遅いのは
いつものことでしたので、
夕飯の後、私達はそれぞれの部屋で過ごしていました。

突然、階段をかけ上がってくる音がしました。

えっ!?

心臓が止まりそうなほど驚きました。

その音は、トトトドドドド!! と、
ものすごい速さで、
ありえない大きな音だったからです。

母ではない。
泥棒でもない。

でも、何かが、
ドアに顔をつけんばかりにして
みじろぎもせず
突っ立っているのだけはわかるのです。

身体中から脂汗が吹き出してきて、
鼓動で頭の中がいっぱいになり、
しばらく動けませんでした。

どれくらい時間が経ったのか、
意を決して、そっとドアを開けましたが、
何もいませんでした。

隣には、全く同じタイミングで
部屋から顔を出した弟の恐怖に満ちた顔。

「聞こえた?」
「‥‥聞こえた」

しばらく見つめあった後、お互いドアを閉めました。

なんとなく、面白がってだけじゃない、
何か意味を持って立っていた気がするんですよね、
あの階段お化けさんは。
(otya)

こわいね!
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2022-08-10-WED