怪・その12

「沈丁花の花」



今年、父を見送りました。

コロナになってからは
施設に入っていた父とは会うことも許されず、
父も一時帰宅することもできず、
会えたのは亡くなる前の1時間程度でした。

大往生の年齢ではありましたが、
父が大好きだった私は悲しく、
施設で会えなくて淋しかったであろう父を思って、
亡くなってから荼毘に付すまでの数日、
泣きっぱなしでした。

葬儀の朝、いつもは気の利かない兄が
帰宅することも叶わなかった父のために
庭に咲いた沈丁花の枝を摘んで来て
棺に入れました。

葬儀も初七日の繰り上げ法要も終わり、
泣いてへとへとになって
県を跨いで帰宅したのは深夜になっていました。

泊まりの荷物をほどいたところ、
沈丁花の花がポロポロと出てきました。

沈丁花の枝を摘んだのは葬儀の朝で、
葬儀場の宿泊施設にいた私たちの荷物に
紛れるはずもないのに。
その沈丁花の花を見て、私はまた泣き崩れました。

主人に、「あまり泣いてばかりいるから、
お父さんが心配して
ついてきちゃったのかも知れないよ。
亡くなってまで心配かけちゃダメだよ。」と言われ、
そうかもしれないと思い、
心の中で父に「まだ暫くは泣いちゃうかもだけど、
心配しないでね」と語りかけました。

それからも時々夢に出てきてくれましたが、
四十九日の前日、
「お母さん(数年前に亡くなっています)と
旅行に行くから」
と二人で夢に出てきてくれました。

あれは父なりに
お別れを言いにきてくれたのだと思います。
(お父さんっ子の50代)

こわいね!
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2022-08-08-MON