怪・その47

「噂のカラオケ店」



僕が大学生だった頃、実際に体験したことです。

ある夏の日。
大学の友人3人と、僕の地元のカラオケで
夜通し歌って遊ぶことになりました。

そのカラオケは町外れにあり、
やや寂れているのですが、
お酒や食べ物などの持ち込みが自由で、
僕らはコンビニで酎ハイやおつまみなどを
大量に買っていきました。

夜7時か8時くらいに入店し、
大盛りあがりで時間が過ぎ、夜中の2時頃のことです。

酒に酔った友人の1人がトイレに行ったのですが、
しばらく経っても戻ってきません。

彼を心配した別の友人(H)が様子を見に行ったのですが、
呼びかけても返事がなかったそうです。

それからさらに10分ほどして、
彼がトイレから戻ってきました。

「ごめんごめん!
トイレで寝ちゃってたよ。
H、さっき肩叩いてくれたよね?」

それを聞いたHは、
「えっ? 確かに行って声はかけたけど、
扉に鍵かかってたよ?」
と言います。

みんなはトイレで寝ていた彼の勘違いだと思い、
「飲み過ぎなんじゃないの? 笑」
とたいして気にせず、カラオケを続けたのでした。

朝6時頃、カラオケの料金体系が切り替わる前に
受付へと向かうと、店員さんが

「5名様で〇〇〇〇円になります」

「えっ、4人ですけど」

「あれ? 監視カメラでは
5名様のようでしたけど‥‥」

そのお店は24時間営業で、
防犯のため部屋に監視カメラがあることは
受付に明記されていました。

その後、店員さんに納得してもらい、
4人分の会計を済ませて店をあとにしました。

友人たちはそのことについて
たいして気にしていなかったようですが、
僕の頭にはあることが浮かんでいました。

昔、そのカラオケ屋さんの一室で、
亡くなった人がいるという噂です。

地元民の間では有名な話で、
「歌っていると音が飛ぶ」とか、
「テレビの映像が乱れる」とか、
まことしやかに囁かれていました。

友人たちは地元民ではなかったために、
噂を知らないようでしたが、
怖がらせたくなかったので僕は黙っていました。

それから数年後にそのカラオケは閉店し、
今は更地になっているのですが、
近くの道を通るたびに
あの日のことを思い出します。

トイレで友人が肩を叩かれたと感じたこと、
店員さんに5人だと思われたこと、
それらは偶然だったのでしょうか‥‥?

(r)

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2021-09-05-SUN