怪・その27

「稲光の瞬間」



夏の夜の出来事です。

その夜の天気は荒れに荒れ、
大雨とともに雷鳴が響いていました。

雷が苦手な私は、タオルケットを頭まで被り、
嵐が過ぎ去るのをじっと待っていました。

ひときわ明るい稲光のあと、

ドドドドォォオン!

と大音量が鳴り響き、落雷で地が揺れました。

耐えられなくなった私は、
せめてもと、一階の居間へ避難するため、
部屋を出ようとしました。

飼い猫が自由に出入りできるように
少しだけ開けてあるドアへ向かっていたところ、

また稲光が部屋を明るくしました。

その瞬間目の前に現れたのは、

ドアの隙間から部屋を覗き込む、

男の白い顔。

思わずヒィィッ!! と悲鳴が出て、
その場にへたりこんでしまいました。

「M子どうした?!」
兄の声で我に返りました。

「なんだお兄ちゃんか…、
脅かさないでよぉ」と泣き声で訴えると、

悲鳴が聞こえたので部屋から出て見にきたら、
座り込んでる私がいた、と言うではないですか。

えっ‥‥、
じゃあ部屋を覗き込んでいたのは、誰?

その日からドアは閉めるようにしましたが、
猫がノブに手をかけて、
自分でドアを開けられるようになってしまい、
ずっと隙間が怖かったです。

(クンツァイト)

こわいね!
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2021-08-20-FRI