怪・その23

「あるじが気に入る家」



私が小学校の頃、引っ越しをしました。

父が
「すごくいい建売り住宅を見つけた。
 もう手付金も払っちゃった!」
と言うのです。

次の日曜日、母がその家を見に行きました。
「何も良くなかった!
 おばあちゃんの部屋は一階になきゃだめ」
と母は言い、結局、
そこの近くの家を買ったのでした。

それから何年も住むうちに、
父の気に入った家は
持ち主が何度も何度も変わりました。

「やっぱり不便なんだよ、私の目に狂いはない」
と母は得意げでした。

中学生の頃、転校生が来ました。
その子はあの「父の気に入った家」に
引っ越してきたのです。

ところが、半年も経たぬうちに
近くのアパートに引っ越しました。

「不便だから直すんじゃないか」
と我が家で話題になりました。

学校帰りその子に会ったので
「家、修理とかするの?」
と聞いたところ、意外な答えが返ってきました。

「お父さんが急に倒れて入院してたの。
 原因が全然分からなくて、分からないから
 お祓いに行ったら、
 『あるじが死ぬ家に住んでいる』
 って言われたんだ。
 それで急いで引っ越したの。
 お父さんは気に入ってたんだけどさー」

家を売って引っ越したら、
お父さんの具合は良くなったそうです。

そんな家ですが、
持ち主を次々と変えながら、今もあります。
空き家の時期はほとんどありません。

友達のお父さんや私の父のように、
あるじが一目で気に入るからだと思います。

(フク)

こわいね!
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2021-08-18-WED