怪・その17

「わかってもらえると」



これは私が中学2年生の夏休みに体験した出来事です。

夏休みの宿題の感想文を書くために、
県内の美術館に友達と二人で行くことになりました。

美術品が好きなので、とても楽しみな気持ちで、
友達を待たせてはいけないと足早で階段を上がって、
美術館の敷地に足を踏み入れたとたん、

‥‥どこか悲しげな寂しげな雰囲気が伝わって来て、
一瞬「ん?」となり、
ワクワクな気持ちが急に悲しみに包まれて
泣きそうになり、
「これは帰った方が良いんじゃないか‥‥
でも楽しみにしていたし‥‥」

と、直感を信じるか無視するか迷っていると、
入り口の方で友達が手を振って待っていたので、
直感を無視することに決めました。

気持ちを切り替えて中に入ると、
美しい絵画やいろんな美術品がズラッと並んでおり、
一瞬で心を奪われて二人で無我夢中で鑑賞し、
心から満足して帰宅しました。

しばらくすると疲れが出たのか体がだるくて、
この日はお風呂や夕食を早目に済ませて
床につきました。

疲れてる筈なのになぜか寝付けず、
ボーッと天井を眺めながら
今日の出来事を思い出していると、
急に眠気が襲って来て、
「あっ寝れる」と瞼を閉じた時、
フラフラと頭が揺れて
グルグルと目眩を起こしている様な状態になり、
ガチーン! と金縛りになってしまいました。

「え? 何? 体が動かないし、
何が起こってるの!?」
と初めての体験にパニックで焦っていると

「ズルズル‥‥ズルズル‥‥」と

頭の方から何かを引きずる音がして
強く気配を感じたので、
恐る恐る目を開けて右側を見て、
思わず息を飲みました。

黒髪で少し長めのおかっぱ頭に白い肌、
薄い花模様の着物に
立派な帯を巻いて足袋を履いていて
歳は同じくらいの少女が、
四つん這いで、畳に爪を深く食い込ませながら
「ギリッ‥‥ギリリ」
と音を立てていました。

顔はうつ向いてるせいでよく見えません。

「ズルズル‥‥」と袖を引きずりながら
自分に近づいてきます。

逃げようにも逃げられない!
声が出ないから助けも呼べないし、
という時にはもう、

少女の顔が上にあって、
ギロリと光った目が合い、
髪が肌にサラサラと触れ、
その瞬間に意識を失いました。

ハッと気がついた時には
朝になっていました。

直ぐに、霊感が強い知り合いの人に
話を聞いてもらいました。

その人が言うには、
とても未練が強い悪霊化した地縛霊で、
時代は大正で非業の死を遂げており、
歳が近い上に二人で楽しそうにしている姿を見て
羨ましくなったんだそうです。

私に憑いたのは、霊感があるから
自分の想いをわかって貰えると思ったそうです。

その後にお祓いを済ませ、
心から成仏を祈りました。

私にとって、この出来事は
18年たった今でも忘れることの出来ない体験です。

‥‥もし直感に従い、
そのまま家に帰っていたら、
あんなに怖い思いなんてしなかったかもしれない、
と思っても後の祭りでした。

(y)

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2021-08-13-FRI