怪・その9

「駐車場の彼女」



わたしの勤める病院の駐車場は
照明がやや暗く、
なんとなく空気が
いつも澱んでいる気がしていました。

だいたい誰がどこに駐車するのか
記憶してしまうのですが、
朝、自分が車を停めた後
とある先生の車の助手席に
誰かが座っているのを見かけました。

ザンバラ髪に白い服の、多分、女性。

瞬間、

あ、この世の人ではないひとだ、

と気がつき、目を逸らしました。

その先生にお伝えすべきかどうか迷いましたが、
こんな話、誰も信じるはずもありませんし、
下手すると嫌がらせと思われます。

今までの経験から、何も言わない、
見なかったことにするのが一番、と
そのままそっと
その場を離れるしかありませんでした。

それから何度か、
その、この世にいないはずの女性を見かけました。

目は虚ろで、しかも血塗れに見えました。

ある時、その車の持ち主である先生から
奥様のことで相談を受けました。

タチの悪いガンが見つかり、
なにか有効な治療法があれば
教えて欲しいとのことでした。

それから二年、
いろいろ手を尽くしましたが
奥様は先ごろ、
まだ中学生のお子さんを遺し、
亡くなりました。

後日、今度はわたしの車の隣に停めている、
また他の科の先生の車の助手席に、
彼女を見かけました。

同じことが起こるのではと
気を揉んでいたところ、
その先生は知ってか知らずか、
その車を一週間ほどで買い替えました。

まだ真新しい車で、
一年も経っていませんでしたが。

職場でその先生が
「なんだか車が気持ち悪くて、
もったいないと思ったけれど買い替えたよ」
と、他の先生に話しているのを聞きました。

それからその死霊をお見かけしません。
彼女はどこへ行ったのでしょう。

(まるぽこうさぎ。)

こわいね!
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2021-08-06-FRI