怪・その50

「分岐の道で」

小学校6年生、海の自然学校へ
宿泊学習に行った時の話です。

最終日、2人組で
施設の周りの遊歩道を歩く
ナイトハイクがありました。

出発前にH先生から

「ずっと一本道だけれど、
最後に1か所だけある分かれ道は
左に行くように。

大きな看板があってわかりやすいから、
心配はいらないよ。

そこまでくればすぐにゴールだから。

今夜は月がとても明るいので、
ライトを消して歩いてみよう。」

と、話があり、
月明りで歩く夜道を楽しみにしながら、
最後に呼ばれる順番を待ちました。

ついに順番がきて、
ペアの子と手をつないで出発。
待つ間に月が高くなり、
ライトなしでも砂まじりの道がはっきり見えます。
このままで大丈夫だね、と、
ライトをつけずに歩き始めました。

しばらく歩くと、
道が大きく2つに分かれているのが
見えてきました。

もう最後かー、意外と早かったね、と、
話しながら進んで行くと、

道の分岐点に「大きな看板」はなく、

白いパーカーのフードを深くかぶって、
顔が見えないくらいに下を向き、
腕をまっすぐ伸ばして右側の道を指差している、
私たちと同じぐらいの身長の人が立っていました。

「看板って、M先生じゃん!
これじゃ肝試しだよ〜(笑)」

小柄で元気いっぱい、
いつもパーカーを着ているM先生が立っていると
思った私たちは、

「M先生こんばんはー、
私たちが最後でーす♪」

と、挨拶をしましたが、
先生はそのままの姿勢で黙っています。

本気で怖がらせようと思っているんだね、と、
笑いながら左の道を進みました。

そこまでくればすぐにゴール、と、
確かにH先生は言っていました。
でも、月明りの夜道はその後もずっと続きました。

おかしい‥‥と、無口になってきた頃、
松林の角を曲がると正面に
「大きな看板」がありました。

左の道を全速力で走ってきた私たちを

心配そうに迎えてくれたのは、

オレンジ色のパーカーを着た、M先生でした。

白いパーカーの人は誰だったのでしょう。

指差された右の道の先には、
何があったのでしょう。

(toro)

こわいね!
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2020-09-08-TUE