怪・その49

「庭を歩き回る」

本屋の店員だった当時。
不規則な勤務時間で、
深夜12時近くに帰宅する事もよくありました。

眠気と疲労と闘いながら車を運転し、
この日も深夜の帰宅でした。
遅い食事を済ませ、お風呂に入り、
二階の自室の布団に入ったのが
深夜2時くらいだったと思います。

うとうとし始めた頃、不意に、
階下のガラス戸がカラカラと開く音が聞こえ、
続いて、ザッ、ザッ、と
サンダルで歩き出す音が響きました。

自室の真下の部屋は祖父の部屋でした。

(‥‥? こんな時間になんだろう。
おじいちゃん、眠れないのかな。)

時々、夜に祖父はタバコを吸うために外へ出て、
庭をぐるりと歩いて回ることがあったので、
その物音かと思いました。

私はうとうとしながらも、
ザッ、ザッ、と歩く音が庭を一周し、
その後またガラス戸がカラカラと開く音を、
寝ぼけた頭で、朧ながらに耳で追っていました。

(やっぱり、おじいちゃんか‥‥。)

疲れていたせいもあり、
そのままその日は眠ってしまいました。

翌日。
起床し、顔を洗っている最中に
唐突に昨夜の出来事を思い出し、
私は変な汗が出るのを感じました。

(そうだ。おじいちゃん、もう死んでるじゃん。)

なぜ、昨日はそう考え付かなかったのか
心底不思議ですが、
祖父はもう亡くなって2年になります。

よくよく考えれば、
実家は確かに古い小さな家ですが、
寝室にいながら、
庭を一周する足音が鮮明に聞こえるのも
おかしな話でした。

そんな事が何日か続きました。
特に怖いとか、嫌な感じがする事も
そんなにありませんでした。
ただ、音がするだけです。

仕事が休みの日に、
やっと両親に相談しましたが、
特に何も聞こえないとのことでした。

家族で話し合い、皆で休みを取り、
お墓参りに行く事になりました。
お墓が荒れてるとか、そんな事もなく、
軽く掃除をしてお花をあげ、帰宅しました。

不思議なことに、
その日から何も音がしなくなったのです。
寂しがった祖父が意思表示のために、
現れたのでしょうか。

(j)

こわいね!
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2020-09-08-TUE