怪・その51

「一晩中話しかけて」

今から12年前のことです。

当時21歳となった私の愛猫が、
腎不全のために
最期を迎えようとしていました。

夜7時頃、
それまで寝込んでいた愛猫が、
突然喉をゴロゴロさせて
私にすり寄ってきました。

私は
「どうしたの?
無理しなくていいんだよ。」
と言いました。

それは、愛猫にとって、
ありったけの力で立ち上がり、
精一杯のありがとうを
伝えに来たのだと思います。

その晩は、愛猫にずっと話しかけていました。

以前、テレビ番組で、
ムツゴロウさんの、
『一晩中話しかけたことで、
「今夜が山」と言われた犬が持ち直した』
との話の記憶があったからです。

あなたに出逢えてどれだけ幸せだったか。
過去の楽しい思い出。
たくさん生きかたや世界の見方を教えてくれたこと。
どれだけ愛しくてかわいくて尊敬していたか。

腎臓病の末期でしたので、
奇跡は起こらないことは覚悟しながらも、
私も精一杯の愛と感謝を伝え続けていました。

翌午前4時頃、
私は眠気に負けて、つい、
うとうととしてしまいました。

そこで見た夢は、
家のカーテンから光がさし、
時計が6時30分を示した光景。

それは一瞬のことで、すぐに目は覚め、
また愛猫に語り出しました。
不思議な夢を見たなぁと思った程度でした。

そして、
母の起きる時間。

母が2階から
階下の私たちの元へ降りてきたところで、
愛猫は発作を起こしました。

私は愛猫を母に抱かせ、
母の腕のなかで、
愛猫は虹の橋を渡っていきました。

ふと、時計を見ると、
朝日のさす6時30分。

あ、夢と同じ景色だ‥‥。

愛猫は、夢を通じて、
「自分はこの時間までがんばるよ」、
とお知らせしてくれていたのだと思いました。

「死ぬときは身を隠さないで。
私たちに看取らせて。
最期まで一緒にいたいから。
家族全員が揃うことがなかなかないなら、
せめて私と母には見送らせて。」

と以前から話していたことを守って、
母が起きるまでがんばってくれたのだと思います。

そして今年のお盆。

眠っていると、明け方に愛猫の夢、
そしてリアルに感じる愛猫の匂いと
ふわふわもふもふな感覚。

2年前に病気で亡くなった、父もおりました。

コロナで帰省できない私のために、
2人で会いに来てくれたのだと思いました。

(s)

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2020-09-08-TUE