怪・その45

「お正月三が日」

私が20歳頃の話です。
その頃実家を新築し、
一人暮らしの大学生だった私は
冬休みに帰省し、
新築の家での初めてのお正月を迎えていました。

2階に私の部屋があり、
階段を降りた正面が玄関、という造りです。
玄関にはお正月用に
母が梅の木を飾っていました。

元旦、目が覚め
階段を降りようと玄関を見下ろすと、

その梅の木の辺りから、
白い半袖を着た
少し髪が長めの若い男性が、
スーッと左から右に移動するのが見えました。

彼は上半身だけでした。

寝ぼけてる?
とさして気にも留めませんでした。

が、2日、3日と
三が日、毎朝遭遇したのです。

不思議と怖さはなく、
???と思うだけでした。

流石に3日間も見たので、母親に言うと、
「新築の家での初めてのお正月に
縁起でもない」と叱られ、

父親には
「ちゃんとお祓いも地鎮祭もしているから
大丈夫」と取り合ってもらえませんでした。

近所に住んでる祖母に話すと、
「この辺りは昔炭鉱があって、
坑道がいろんなところに掘られているから、
事故に遭った人も
沢山いたろうねぇ」と教えてくれました。

若いのに事故で亡くなったのかな、
お正月を家族で迎えられなかったのかな。

それは想像でしかありませんが、
自分の平和な境遇にありがたみを感じた
お正月になりました。

三が日を過ぎると、
それきり見なくなりました。
それ以降一度も見ていません。

でも、毎年お正月には思い出し、
無事に新年を迎えられる有難みを感じる
出来事になっています。

(ラララ)

こわいね!
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2020-09-03-THU