怪・その44

「あのホテルのあの部屋」

15年ぐらい前のことです。
NYに在住していて、
カナダのモントリオールに出張した時のことです。

いつもの大きなチェーンのホテルが
コンベンションでもないのに満室だったために、
格式のある古いホテルを、初めて予約していました。

飛行機が雷雨で遅れ
到着が23時過ぎになってしまい、
タクシーで空港から乗り付けると
フロントで言い訳をしながら
チェックインをしようとしました。

オーバーブッキングだと
泊まれないないこともあるので、
心配していたところ、案の定、

「お客様のご予約いただいているクラスの部屋は
残念ながら今準備ができておりません。
一時間ぐらい待っていただければ空きますが
どうされますか?

代わりに広い部屋なら
同じ料金でお泊りいただけますが、
それでもよろしいでしょうか?

ただし、あまり使用していない部屋なので、
メインのベットルーム以外は
掃除が行き届いていないかもしれないですので
あまりお勧めはしません」

と言われました。

飛行機が遅れて疲れていたので
早く眠りたくて、
了解してその部屋に行くと、
ベットルームが3つ、
ダイニングルームにリビングルーム、
会議室もある
とんでもない広いスイートルームでした。

メインと思われるベッドルームで荷物を開いて、
シャワーを浴び、
さっさとベッドに入ると、

シーツは乾いているのですが、
部屋の空気がジトっとしています。

それでも疲れからか
すぐに眠りに入ったのですが、

しばらくすると

誰もいないはずのリビングから

何かが近づく気配がします。

ドアは閉めたはずなのに、
開いているのに気づいて、
まずいと思った次の瞬間、

白いメイドのドレスを着た人が

私のベッドのシーツを両手で押さえて

引っ張ろうとするのです。

顔はぼやっとしてはっきりしません。

シーツを取られないように
一生懸命つかむのですが、
かなり力が強く、

No thank you. Leave me aloneと怒鳴ると

すっと消えてしまいました。

緊張が解けてそれからまた
すぐに眠ってしまいました。

翌朝、地元に住む同僚に話をすると、
「あのホテルのあの部屋に泊まったのか?」
と言われました。
地元では有名みたいです。

(K)

こわいね!
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2020-09-03-THU