怪・その46

「二階の奥の部屋」

20年以上前の話ですが、
ふと思い出したので投稿させて頂きます。

まだ実家に、親兄弟と一緒に住んでいた頃。
ある夜に寝ぼけ眼の兄が、
隣の部屋にいた私に聞いてきました。

「お前、俺の部屋に来た?」

兄の部屋は
二階の一番奥にある畳の部屋なのですが、
その部屋へ行くには
私の部屋の前の廊下を通る必要があります。

私はずっとドアを開けていましたが、
兄の寝ている部屋に行く人は
いなかったと思います。

でも、兄が言うには、

誰かが寝ている自分の横を歩く足音が
聞こえたのだそうです。

思春期真っ只中で
兄妹の会話も少なかった時期。
兄が私に話しかけること自体が珍しくて
印象に残りましたが、
その話自体はそれきり、
すっかり忘れていました。

しばらくして、その二階の奥の部屋を
私が使うことになり、ある日。

電気をつけたまま昼寝をしてしまい、
ふっと覚醒した時、
廊下の向こうから
誰かがこの部屋に向かって
歩いてくるのが聞こえました。

その足音はどんどん近づいてきて、

私の寝ている部屋に入り、

そのまま目の前まで来たことが

畳を踏む足音で分かりました。

お母さんかな、と思って
ぼんやり目を開けましたが、
確かにシャリ‥‥シャリ‥‥という
畳を踏む音がしているのに、

誰の姿も見えませんでした。

寝ぼけていたからか
不思議とそれほど恐怖は感じず、
その時はそのまま眠ってしまいました。

晩ご飯よ! と呼ぶ声に起き出して、
階下の母に
「さっき部屋に来た?
足音が聞こえたんだけど」
と聞くと、
行ってないわよ、とのこと。

しかし、自分がそれを聞いたことで、
以前、兄からまったく同じことを
聞かれたことを思い出し、
その時初めてゾッとしました。

今でも実家に帰ると
その部屋で寝ていますが、
見えない足音はそれきりです。

誰が、何の目的でそこを通っていたのか、
今でも時々考えています。
(y)

こわいね!
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2020-09-05-SAT