怪・その32

「夕暮れの背中」

昔、私と妹は、
二階にある部屋の二段ベッドで寝ていて、
私が上の段でした。

ある日の夕方、
私がベッドでうつらうつらしていた時、
一階から母の呼ぶ声が聞こえました。

ベッドの階段を降り、
ふと見ると、
下のベッドに妹がいました。

彼女はこちらに背を向けて、
壁側に向かって
座っていました。

夕暮れの
薄暗くなってきた部屋の中、

彼女の着ていた白と青の横縞シャツが
とても目立っていたのを覚えています。

私は「何してるのかな?」と思いつつ、
声をかけずに一階に降りました。

一階にいた母に用件を聞くと、
母は、
呼んでいない、と言います。

寝ぼけたかな‥‥と思っていた時、
部活か何かで遅くなった、
と、妹が帰ってきました。

「あれ?
 二階にいなかった?」

「今帰ってきたんだよ」

その時初めて私は、
座っていたのが妹ではなかったと気づきました。

だいたい、妹は、
あそこまで短い髪ではなかったし、
あんな服は持っていなかったし、
そもそも女性だったのか‥‥。

しかし、
思い出そうとすればするほど、
あやふやになるのです。

ただ、
まったく怖くなかったことと、
青と白のストライプだけは、
今でもはっきり覚えています。

(真水)

こわいね!
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2020-08-25-TUE