怪・その31

「足音とSNS」

友人とイタリア旅行した時のことです。

友人の希望で、
ヴェネツィア近郊の温泉保養地に一泊しました。

日本の温泉旅館とは違い、
療養やリハビリを行うことを目的とした
長期滞在が基本の保養地、
という雰囲気のホテルでした。

逗留客は、
イタリア内外の裕福そうな高齢の方ばかり。

フロント、ロビー、温水プール、
どこを見回しても、
60歳未満でアジア系の宿泊者は
私と友人だけでした。

夜10時を過ぎた頃、
部屋の外の廊下を
バタバタ走り回る足音がします。

どうやら幼い子どもが
廊下の端から端まで
かけっこしているようです。

欧州は、子どものしつけが
厳しいイメージがあったけど、
旅先では多少の発散を許すのかしらね、
などと話していました。

しかし何往復もするので、
友人が扉を開けて覗きました。
そして、
「2人いる」
と教えてくれました。

やがて、足音は止みました。

朝食のレストランで、私たちは気づきます。

このホテルの滞在者は皆高齢で、
子ども連れなどいないことに。

そしてもうひとつ。

私は帰国後すぐに、
「旅先であった不思議なこと」として、
この体験をSNSに書きました。

しかし数年後に読み返して、
違和感を覚えます。

友人が廊下を見たのなら、
子どもの性別とか年齢とか人種について、
私が質問しなかったのはなぜか?

友人にLINEで
「あの時、廊下見たんだよね?」

と確認すると、
友人は

「見てないよ」。


私はいったいなぜ、SNSに

「A子がドアを細く開けて廊下を覗き、
子どもが2人いると教えてくれた」

と書いたのでしょう?

(s)

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2020-08-25-TUE