怪・その2

「人形の向きが」

母は雛人形で怖い思いをしたとのことで、
私には「人形」というものを
買ってくれませんでした。

女子大に通う頃は
流石に人並みに部屋を飾りたくて、
部屋にスヌーピーや亜土ちゃん人形を
置くようになりました。

ある日、下校時に夕立ちで困っていた人に
傘を貸してあげました。

その数日後、貸してあげた傘と一緒に
小さな人形がクツ箱に入っていました。
その人がお礼に入れてくれたんだなぁと
思いました。

当事流行った亜土ちゃん人形を
小さくしたような人形は、
スヌーピーたちの仲間入りをし、
しばらくは何事もなく過ぎていきました。

そのうち、机に向かっていると
背後に何か、違和感を感じるようになりました。
振り返ってもベッドとチェストがあるだけで
特に変わったこともなく。

また数日後、やはり背後に何か‥‥。
あぁ、母が掃除でもしてくれたのか、
チェストの上の小さな人形が
あらぬ方向を向いていたのです。

ところが母は掃除どころか
部屋にも入ってないと言うのです。

私がチェストの開け閉めで、
気付かないうちに動いたんだと思い、
何度も何度も引き出しを動かしてみましたが、
人形が動くわけもありません。

その時、これはひょっとして、と思い、
その小さな人形をわざと
背中向きに置いてみました。

案の定、気が付くと
その人形だけが向きを変えているのです。

もちろんチェストにはさわっていませんし、
他のぬいぐるみや人形は動くはずもなく。

傘を貸した同じ女子大の人は、
あとにも先にも会うことはなく、
友だちにも、そんな人知らない、
と言われる始末。

あまりに不気味な出来事だったので、
その人形は、母の助言で、
心を込めて書いた写経にくるんで
処分しました。

30年以上経った今、
思い出してもざわざわしてきます。

(よっちぃ)

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