おとなの小論文教室。

受験のテクニックとして、小論文の書き方を勉強した?
その後は、ナイスなテキストを書いていますか?
考えること伝えることの愉快を、ここで味わいましょう。
ありがたいことに、小論文というものを
考えたり、たのしんだり、たくさん読んできた
カジュアルで優しい先生がいるんです。
さぁ、山田ズーニー先生、お願いしまーす。

Lesson1076
優先順位の1番、わかっているか?

自分のいちばん大事なものって、
実は自分でよくわかっていない。

「優先順位をつけてからやりなさい」

なんて言われて、紙に書き出して、
順番を決めて、1番を優先して‥‥って、私もやった。

けど、私が1番と思い込んでたものは、
実はぜんぜん1番じゃなかった。

「優先順位の1番、
自分はホントにわかっているだろうか?」

「わかってないとすれば、
なんで1番を見失うんだろうか?」

最近、私はひっこしをした。

急なすごい家賃の値上げで、
急にひっこさねばならなくなり、

部屋探しの条件をランダムに書き出していった。

・家賃の上限。
・広さの下限。
・夜の帰り道が怖くないこと。
・2階以上。
・キッチンと居間にしきりがある。
・鉄筋。‥‥などなど、

全て書き出して、絞り、
優先順位の1番を決めた。それは、

「新築」。

人は笑うかもしれない。
けど、コロナ禍、私は「そうじ習慣」を確立した。

自分の住みかを、我が手で磨き上げる歓びを知り、
自信もついた私が、

悔しかったのは、前の住人がつけた汚れが、
どーしても取れなかったこと。

「次は新築に住んで1から我が手で掃除する!」

が優先順位の1番になった。

不動産屋さんの仲介ご担当にも、
優先順位1番=新築、と告げたが、

「東京の家賃はかなり上がっており、
都内でその値段、その条件はムリです。」

と最初に言われた。

優先順位1番のためには他を諦めねばならない。

私は東京を出ることも覚悟し、
他の条件も極力手放すと仲介担当に告げたが、
いっこうに、これだという物件が見つからない。
それどころか探せば探すほど遠のいていく。

それもそのはず、私は致命的な思い違いをしていた。

退去まで1ヵ月となり、焦りが隠せなくなった時、

運命の日を迎えた。

その日私は、ほぼ理想の物件を内見していた。

新築=優先順位の1番で。

理想どおりの間取り、駅近、鉄筋、2階以上、
それでいて予算より安い家賃。

この時の感覚を、私は一生忘れないと思う。

「いったいどうしたんだろう?
優先順位の1番に手が届いたというのに、
いっこうにときめかない自分がいる。」

それどころか、みぞおちに砂を抱えたかのごとく、
ボロボロと虚しさが広がっていく。

新築の清潔感も、モダンな間取りのウキウキ感も、
一瞬で根こそぎ奪ってしまう、窓の外の風景。

そこは関東でも、かなり治安の悪い場所だった。

若い仲介担当者はそれを知らなかった。
知らなかったと謝っていた。
けど、私には必要な経験だった。
この手違いがあったからこそ私は気づけたのだ。

「私が優先順位の1番と思っていたものは、
ぜんぜん優先順位の1番じゃなかった。」

治安が悪いと言っても色々あるが、
そこはすべての感情が脱水されたかのような
すさんだ場所だった。
最寄り駅までタクシーで移動する間にさえ、
その灰色に渇いた環境に、
自分の感情までどんどん脱水されていくのがわかった。

人がいかに環境の産物か思い知らされた。

ものを書く私にとって、環境は死活問題だ。

「環境か? 新築か?」

つきつけられて、迷う間もなく
「環境」だと気づかされた。

そこを境に、

私は、新築という執着を手放し、
「環境」を優先順位の1番にした。

自分が思う優先順位の1番と、
現実の優先順位の1番と、ねじれがなくなってから、
たった6日で理想の物件が見つかった。

新築という条件をたった1つ手放しただけで、
他の条件すべてが手に入った。

これには仲介担当も、
「都内でこの物件はまずない」
と驚きを隠せなかった。

「それにしても、
なんで優先順位の1番をまちがえたかなあ、私?」

めったに神仏に頼らない私が、
部屋探しにそうとう疲弊したんだろう、
めずらしく神社にお参りに行った。
まさに苦しい時の神頼みだ。

ご利益がすごいという神社に、
現実的にお願いしたいことはいくつもあった。

さしあたって仕事のことも、
それからひっこしも、と、
待ってる間に欲が出てとても1つにまとまらない。

ところが、手を合わせた瞬間、

どうしたことか、事前に用意した願いは一切でてこず、
ただ家族の健康長寿一択だった。

そこに一切の迷いも後悔もない自分がいた。

「優先順位の1番ってそういうものかもなあ」

どうして部屋探しの時、
1番大事な「環境」を見失ったかというと、

自分が生まれてこのかた、
環境にはずっと恵まれていたからだ。

生まれ育った故郷を含め、学校も、職場も、
住むところも。

「恵まれて、それが当たり前になっていると、
人は欲にとらわれ、優先順位の1番を見誤る。」

これから選択をする人、

部屋探し、就活、婚活、進路選択、
人生の大事な決断をしていく際に、

人は自分に無いものに憧れ、
そこにとらわれてしまうと、
欲になったり執着になったりする。

私のように、新築に住んだことが無いから憧れ、
でも、経験の無いよく知らないものだから、
実はそんなに自分にとって大事じゃなかった、
なんてことも起きる。

そんな時は、

「有るもの」に目を向けてみたらどうだろう。

自分をずっと生かしてきたもの、
自分をずっと育んできたもの。

ずっと恵まれてきてしまって、
もう当たり前になってしまって気づかないようなところ、
そんなところに、

「自分の優先順位の1番はある」

と私は思う。

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「おとなの小論文教室。」を読んでのご意見、ご感想を
ぜひお送りください
題名を「山田ズーニーさんへ」として、
postman@1101.com までメールでお送りくださいね。
★仕事のご依頼はここに送らないでください。
山田ズーニーtwitter( @zoonieyamada )へお願いします。
または山田ズーニーの本を出している出版社に
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お問い合せ 金城学院大学 入試広報部
TEL:0120-33-1791 Mail:nyushi@kinjo-u.ac.jp


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【満員御礼!】この講座は満席になりました。
キャンセル待ちも締め切りました。
たくさんのお申込みありがとうございました。

宣伝会議 表現力養成コース

編集・ライター養成講座20周年記念講座

山田ズーニー専門クラス
——–伝わる・揺さぶる!文章を書く

山田ズーニーです。
私は、これまで北は北海道から南は鹿児島まで、
大学・高校生から
ビジネスマン・プロのライターから作家まで
幅広い層に、数えきれないほど表現講座を開いてきました。
その原型が生まれたのが、
宣伝会議の編集・ライター養成講座でした。
現在も講師をつとめており、毎回、
受講者に次のような声をいただき手ごたえを感じています。

 

・自分の想いの根幹を探るという経験を
こんなにじっくりと時間をかけてやったことはなかった、
得難い経験でした。

・終了したとき、この講義の意図が
身体にしみわたるように理解できた。
コミュニケ―ションが苦手だったが、
非常に楽しく有意義に受講できた。

・自己開示が苦手だったが、一気に開くことができた。

・現実の出来事を多角的に見て、表現のヒントを探すことは
全ての実務に活かせると思います。

・自分の可能性を信じようと思えた。
自分はつまらない人間ではない。

今回20周年を記念して、ご担当者の、
「この先を行く特別な講座をひらきたい。
表現力をつけたい気持ちはあるものの、
そもそも自分に伝えたいことはあるのか、
と悩む人も多く、その人たちに、
自分を貫くテーマを発見したり、
相手の心に響くように伝えるコミュニケーション力を
つけたりできる場を提供したい。」
という志に共感しました。
2時間×12コマで、
文章表現の本格的な基礎づくりから始まって、
相手に伝わる表現、社会に説得力を持って書く、
さらに、自分にしか書けない主題を発見して書く!
までを責任を持ってサポートします。
ひとりでは気づけない自分の潜在力も、
多彩な仲間とともに引き出しあえるから開花します!
表現を通して他の受講者と心底通じ合える
「感動」の授業です。
心を揺さぶる文章を書きに、ぜひ、来てください。

あなたには書く力がある。

●詳細・お申し込み・お問い合わせは、すべて
こちらのページから
(株)宣伝会議 教育事業部 担当:小林Tel.03-3475-3030まで
*「ほぼ日」へのお問い合わせはしないでください。
*コラムの感想メールでお問い合わせはしないでください。


表現して人とつながる勇気のレッスン!



『理解という名の愛がほしい。』
河出文庫

会社を辞めた私がツラかったのは、まわりが
平日の昼間うろうろしている
無職のおばさんと見ることだった。

それまで仕事をがんばって経験を積んできた
他ならぬ私をわかってほしい。

この発想・考え・想い・感性が、
かけがえなく必要とされたい。

理解という名の愛がほしい。

「理解されたいなら、自分を表現しなきゃだめだ。」

やっとそう気づいた私は、
インターネットの大海原で
人生はじめての表現へ漕ぎ出した。


山田ズーニーワークショップ満員御礼!

いったんウェイトリストを締め切ります。

2017年6月開講したワークショップ型実践講座
「伝わる・響く!言葉の表現力をつける」
にたくさんのお申込みをありがとうございました。

大好評で即日満席、
2期、3期、4期と増設するも追いつかず、
1年待ちのウェイトリストのみ受け付けておりましたが、
現在までに12期分のお申込みがあり、
2年待ち以上の方が出てくる見込みが強くなりました。

責任を持って対応するため、
ここでいったんウェイトリストを締め切ります。

言葉の表現力をつけたいと
申し込んでくださった方々の想いを大切に
受け入れを進めてまいります。

 

●この講座に対するすべてのお問い合わせはこちらへ。

お問い合わせ先 
毎日文化センター東京 TEL03-3213-4768

http://www.mainichi-ks.co.jp/m-culture/each.html?id=699

2018年以降、東京開催、詳細未定、1年待ち。

*「ほぼ日」へのお問い合わせはしないでください。
*コラムの感想メールでお問い合わせはしないでください。

 

ワークショップ型実践講座
「伝わる・響く!言葉の表現力をつける」

――3回で一生ものの書く力・話す力が育つ

書くことによって、人は考える。
自分の内面を言葉で深く正しく理解する。
そのことにより、納得のいく選択ができるようになり、
意志が芽生える。

さらに、

言いたいことを、相手に響くように伝えられるようになる。
インターネット時代に、広く社会に
説得力を持って自分の考えを発信できるようになる。

書く力=想い言葉で表現するチカラを鍛えれば、
自分を知り、自分を表現することができる。

自分の想う人生を、この現実に書いて創っていける。

あなたには表現力がある。

山田ズーニーワークショップ型実践講座、
2017年6月東京で開講しました!


「おとなの小論文教室。」を読んでのご意見、ご感想を
ぜひお送りください
題名を「山田ズーニーさんへ」として、
postman@1101.comまでメールでお送りくださいね。

注:講演など仕事の依頼メールは、
上記アドレスに送らないでください。
山田ズーニーのtwitter(@zoonieyamada)に
直接ご連絡いただくか、
山田ズーニーの本を出している出版社に
連絡先をお問い合わせのうえで、
ご依頼くださいますようおねがいします。


★出演情報などお知らせのあるときは
 山田ズーニーのtwitter(@zoonieyamada)にも掲載します。



『半年で職場の星になる!
 働くためのコミュニケーション力』
 ちくま文庫

あなたが職場の星になる!コミュニケーション術の決定版。
一発で信頼される「人の話を聞く技術」、
わかりやすい報告・説明・指示の仕方、
職場の文書を「読む技術」、社会人としてメールを「書く技術」。
「上司を説得」するチカラ、通じる「お詫び」、クレーム対応、
好感をもたれる自己紹介・自己アピールのやり方。
人を動かし現場でリーダーシップを発揮する表現力から、
やる気が湧き・上司もうなる目標の立て方まで。
この1冊で仕事のフィールドで通じ合い、チームで成果を出していける!
自由はここにある!


ラジオで、山田ズーニーが、
『おかんの昼ごはん』について話しました!

録音版をぜひお聞きください。
「ラジオ版学問ノススメ」(2012年12月30日~)
 インターネット環境があれば、だれでもどこからでも
無料で聴けます。
 聴取サイトは、http://www.jfn.co.jp/susume/
 (MP3ダウンロードのボタンをクリックしてください)
 または、iTunesからのダウンロードとなります。


ほんとうにおかげさまで本になりました!
ありがとうございます!


『おかんの昼ごはん』河出書房新社
「親の老い」への哀しみをどう表現していいかわからない
私のような人は多いと思います。
読者と表現しあったこの本は、思い切り泣けたあと、
胸の奥が温かくなり、自分の進む道が見えてきます。
この本が出来上がったとき、おもわず本におじぎをし、
想いがこみ上げいつまでもいつまでも本に頭をさげていました。
大切な人への愛から生まれ、その先へ歩き出すための一冊です。



『「働きたくない」というあなたへ』河出書房新社
「あなたは社会に必要だ!」
ネットで大反響を巻き起こした、おとなの本気の仕事論。
あなたの“へその緒”が社会とつながる!



『新人諸君、半年黙って仕事せよ』
―フレッシュマンのためのコミュニケーション講座(筑摩書房)
私は新人に、「だいじょうぶだ」と伝えたい。
「あなたには、コミュニケーション力がある」と。
            ――山田ズーニー。



『人とつながる表現教室。』河出書房新社
おかげさまで「おとなの小論文教室。II」が文庫化されました!
文庫のために、「理解という名の愛がほしい」から改題し、
文庫オリジナルのあとがきも掲載しています。
山田はこれまで出したすべての本の中でこの本が最も好きです。



『おとなの進路教室。』河出書房新社
「自分らしい選択をしたい」とき、
「自分はこれでいいのか」がよぎるとき、
自分の考えのありかに気づかせてくれる一冊。
「おとなの小論文教室。」で
7年にわたり読者と響きあうようにして書かれた連載から
自分らしい進路を切りひらくをテーマに
選りすぐって再編集!



▲文庫版でました!
 あなたの表現がここからはじまる!

『おとなの小論文教室。』 (河出文庫)


ラジオ「おとなの進路教室。」
http://www.jfn.co.jp/otona/

おとなになっても進路に悩む。
就職、転職、結婚、退職……。
この番組では、
多彩なゲストを呼んで、「おとなの進路」を考える。
すでに成功してしまった人の
ありがたい話を聞くのではない。
まさに今、自分を生きようと
もがいている人の、現在進行形の悩み、
問題意識、ブレイクスルーの鍵を
聞くところに面白さがある。
インターネット、
ポッドキャスティングのラジオ番組です。



「依頼文」や「おわび状」も、就活の自己PRも
このシートを使えば言いたいことが書ける!
相手に通じる文章になる!

『考えるシート』文庫版、出ました。



『話すチカラをつくる本』
三笠書房

NHK教育テレビのテキストが文庫になりました!
いまさら聞けないコミュニケーションの基礎が
いちからわかるやさしい入門書。


『文庫版『あなたの話はなぜ「通じない」のか』
ちくま文庫

自分の想いがうまく相手に伝わらないと悩むときに、
ワンコインで手にする「通じ合う歓び」のコミュニケーション術!


『17歳は2回くる―おとなの小論文教室。III』
河出書房新社


『理解という名の愛が欲しいーおとなの小論文教室。II』
河出書房新社


『おとなの小論文教室。』
河出書房新社


『考えるシート』講談社


『あなたの話はなぜ「通じない」のか』
筑摩書房</small



『伝わる・揺さぶる!文章を書く』
PHP新書

内容紹介(PHP新書リードより)
お願い、お詫び、議事録、志望理由など、
私たちは日々、文章を書いている。
どんな小さなメモにも、
読み手がいて、目指す結果がある。
どうしたら誤解されずに想いを伝え、
読み手の気持ちを動かすことができるのだろう?
自分の頭で考え、他者と関わることの痛みと歓びを問いかける、
心を揺さぶる表現の技術。
(書き下ろし236ページ)



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