おとなの小論文教室。

受験のテクニックとして、小論文の書き方を勉強した?
その後は、ナイスなテキストを書いていますか?
考えること伝えることの愉快を、ここで味わいましょう。
ありがたいことに、小論文というものを
考えたり、たのしんだり、たくさん読んできた
カジュアルで優しい先生がいるんです。
さぁ、山田ズーニー先生、お願いしまーす。

Lesson928
アウェイに棲む

風あたりきつい状況でも、
心を閉ざさず暮らしていくと、
どっか、なんか、ほんのちょっとでも、
心が通じる人間とか、時間とか、空間にでくわすものだ。
瞬間、心がなごんだり、自分を解放できたり。
だから、あきらめてはいけない。

海外に行った日本人が疎外されているのを番組で見て、

ふだん私は、自分が日本人とかあまり意識しないけど、
相手側の人々に対して憎しみにちかい感情が
湧いてきそうになった。そのとき、まてよ!

「私が憎むのは、先入観で人を見ること、であって、
この人たちではない。
いま私が、この人たちをひとくくりにして憎んだら、
それこそ私の嫌いな先入観にやられることになる。」

「先入観」で見られたこと、私にもあったな。

昔、悪意が拡散されて、
まわりの人もそれを信じ込んでしまい、
着任と同時にアウェイだったことがある。

自分が、その人たちに何か悪いことをしたのなら、
まだ納得がいく。
でも、私と会ったことも、話したこともない、
全く初めて会う人たちが、先入観だけで、私を冷遇する。

「私があなたに、なにをした?」

でも、腹を立てたり、暗い態度をとったり、
しかえししたりしたら、それこそ相手側の思うツボだ。
先入観に対抗するには、事実を知ってもらうこと。
ふだんどおりの「自分の良さ」から一歩も下がらないで
いなければいけない。

「先入観が崩される=私が思いのほか良い人間だった」

というのが相手側に一番しみることだ。
だから、ふだんどおり、笑顔で挨拶しなきゃならない。
いつものように成果を出さなきゃいけない。
たとえ相手に冷たくされても、こちらは、
明るく、自分らしく、接していかなきゃいけない。

冷たくされ続けると、自分の自信も損なわれて行く。

そこに向かう時、建物が近づいてくると、
どんどんどんどん顔がこわばってくる。
への字に固く下がった口を、叩いて、揉んで、
両手でぎゅーっと押し上げて、笑顔を作った。

夕方になると、そこの建物には館内放送が流れる。

その音楽が、

懐かしくって、温かくって、すっと心に入ってくる。
子どもの頃を思い出す、郷愁ある音楽。
その瞬間、心がふわぁーっと緩んで、武装解除になる。
体中も、神経も、思考も、
こんなに緊張してたんだと気づく。

そして、「自分らしさのありかはここだ」と取り戻す。

風あたりキツイ状況でも、その音楽とだけは通じ合えた。

状況は大きくは変わらず、
でも、ふだんどうりの自分の働きを積み上げるうちに、
「あ、いま、この人、一瞬共感してくれた」
「あ、ある人が深く頷いてる。これはポーズじゃないよな」
と、ちょっとだけ通じたような瞬間が訪れるようになった。
成果が出たとき、一瞬、涙ぐんでくださった人もいた。

その年の暮れ、「来年もぜひ!」とオファーをいただいた。
先入観ではない、現実の私が受け入れられたのだ。

アウェイで暮らすとき、心が折れそうになる。

けど「アウェイ」という言い方もまた「先入観」だ。

相手側の全部をひとくくりにして嫌ってないか?
そこの土地も、建物も、集団も、
一人一人も、水も、空気も、
全部がベタっと黒一色のように、自分を嫌っているか、
というと、必ずしもそうではないんじゃないか。

もしかすると1人くらいは、
「人を色眼鏡で見ない、自分の目で確かめる主義」
の人がいるかもしれない。

おいしい、自分にあう水が流れているかもしれない。

自分に冷たい態度をとる人の心の中にも、
どっか、なにか、1ミリ、「ここだけは良い」と
自分を認めてくれている部分があるかもしれない。

いま自分をあきらかに嫌っている人が、
それでもいつか、自分の言動に、「そうそう!」と
あきらかな共感を示してくれる瞬間がくるかもしれないし、
実は自分に好意的な人間もいるかもしれない。

その全部を黒一色に見て、一発でくつがえすのは難しい。

「まだら」に見る。

そして、どっか、なんか、ほんのちょっとでも、
心が通じる人間とか、時間とか、空間に出くわすこと。
そのために心をとざさずに、そこで生きる。

通じる一瞬、一瞬が、風穴をあける。

いまの相手の限界としてある先入観にも、
いまの自分の限界としてある先入観にも、
風穴を開けてくれると信じたい。

だから、あきらめてはいけない。

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高校生対象、山田ズーニー小論文講演会のおしらせ
いちからわかる! 志望大の夢をつかみとる!
「小論文合格対策講座」

7月14日(日) 金城学院大学にて
09:45〜10:45 12:50〜13:50

(2講演、同じ内容です。愛知県名古屋市。)

入試に小論文がある高校生が、
小論文とは何か、いちからわかり、好きになり、
本番でどう考え、どう書くかまでつかめる講座です。

金城学院大学の志望者でなくとも、
高校生ならどなたでも無料で聞くことができます。
ただし資料に限りがあり、大人の見学はご遠慮ください。

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「おとなの小論文教室。」を読んでのご意見、ご感想を
ぜひお送りください
題名を「山田ズーニーさんへ」として、
postman@1101.com までメールでお送りくださいね。
★仕事のご依頼はここに送らないでください。
山田ズーニーtwitter( @zoonieyamada )へお願いします。
または山田ズーニーの本を出している出版社に
連絡先をおたずねください。

 


表現して人とつながる勇気のレッスン!



『理解という名の愛がほしい。』
河出文庫

会社を辞めた私がツラかったのは、まわりが
平日の昼間うろうろしている
無職のおばさんと見ることだった。

それまで仕事をがんばって経験を積んできた
他ならぬ私をわかってほしい。

この発想・考え・想い・感性が、
かけがえなく必要とされたい。

理解という名の愛がほしい。

「理解されたいなら、自分を表現しなきゃだめだ。」

やっとそう気づいた私は、
インターネットの大海原で
人生はじめての表現へ漕ぎ出した。


山田ズーニーワークショップ満員御礼!

いったんウェイトリストを締め切ります。

2017年6月開講したワークショップ型実践講座
「伝わる・響く!言葉の表現力をつける」
にたくさんのお申込みをありがとうございました。

大好評で即日満席、
2期、3期、4期と増設するも追いつかず、
1年待ちのウェイトリストのみ受け付けておりましたが、
現在までに12期分のお申込みがあり、
2年待ち以上の方が出てくる見込みが強くなりました。

責任を持って対応するため、
ここでいったんウェイトリストを締め切ります。

言葉の表現力をつけたいと
申し込んでくださった方々の想いを大切に
受け入れを進めてまいります。


●この講座に対するすべてのお問い合わせはこちらへ。

お問い合わせ先 
毎日文化センター東京 TEL03-3213-4768

http://www.mainichi-ks.co.jp/m-culture/each.html?id=491

2018年以降、東京開催、詳細未定、1年待ち。

*「ほぼ日」へのお問い合わせはしないでください。
*コラムの感想メールでお問い合わせはしないでください。


ワークショップ型実践講座
「伝わる・響く!言葉の表現力をつける」

――3回で一生ものの書く力・話す力が育つ

書くことによって、人は考える。
自分の内面を言葉で深く正しく理解する。
そのことにより、納得のいく選択ができるようになり、
意志が芽生える。

さらに、

言いたいことを、相手に響くように伝えられるようになる。
インターネット時代に、広く社会に
説得力を持って自分の考えを発信できるようになる。

書く力=想い言葉で表現するチカラを鍛えれば、
自分を知り、自分を表現することができる。

自分の想う人生を、この現実に書いて創っていける。

あなたには表現力がある。

山田ズーニーワークショップ型実践講座、
2017年6月東京で開講しました!


「おとなの小論文教室。」を読んでのご意見、ご感想を
ぜひお送りください
題名を「山田ズーニーさんへ」として、
postman@1101.comまでメールでお送りくださいね。

注:講演など仕事の依頼メールは、
上記アドレスに送らないでください。
山田ズーニーのtwitter(@zoonieyamada)に
直接ご連絡いただくか、
山田ズーニーの本を出している出版社に
連絡先をお問い合わせのうえで、
ご依頼くださいますようおねがいします。


★出演情報などお知らせのあるときは
 山田ズーニーのtwitter(@zoonieyamada)にも掲載します。



『半年で職場の星になる!
 働くためのコミュニケーション力』
 ちくま文庫

あなたが職場の星になる!コミュニケーション術の決定版。
一発で信頼される「人の話を聞く技術」、
わかりやすい報告・説明・指示の仕方、
職場の文書を「読む技術」、社会人としてメールを「書く技術」。
「上司を説得」するチカラ、通じる「お詫び」、クレーム対応、
好感をもたれる自己紹介・自己アピールのやり方。
人を動かし現場でリーダーシップを発揮する表現力から、
やる気が湧き・上司もうなる目標の立て方まで。
この1冊で仕事のフィールドで通じ合い、チームで成果を出していける!
自由はここにある!


ラジオで、山田ズーニーが、
『おかんの昼ごはん』について話しました!

録音版をぜひお聞きください。
「ラジオ版学問ノススメ」(2012年12月30日~)
 インターネット環境があれば、だれでもどこからでも
 無料で聴けます

 聴取サイトは、http://www.jfn.co.jp/susume/
 (MP3ダウンロードのボタンをクリックしてください)
 または、iTunesからのダウンロードとなります。


ほんとうにおかげさまで本になりました!
ありがとうございます!


『おかんの昼ごはん』河出書房新社
「親の老い」への哀しみをどう表現していいかわからない
私のような人は多いと思います。
読者と表現しあったこの本は、思い切り泣けたあと、
胸の奥が温かくなり、自分の進む道が見えてきます。
この本が出来上がったとき、おもわず本におじぎをし、
想いがこみ上げいつまでもいつまでも本に頭をさげていました。
大切な人への愛から生まれ、その先へ歩き出すための一冊です。



『「働きたくない」というあなたへ』河出書房新社
「あなたは社会に必要だ!」
ネットで大反響を巻き起こした、おとなの本気の仕事論。
あなたの“へその緒”が社会とつながる!



『新人諸君、半年黙って仕事せよ』
―フレッシュマンのためのコミュニケーション講座(筑摩書房)
私は新人に、「だいじょうぶだ」と伝えたい。
「あなたには、コミュニケーション力がある」と。
            ――山田ズーニー。



『人とつながる表現教室。』河出書房新社
おかげさまで「おとなの小論文教室。II」が文庫化されました!
文庫のために、「理解という名の愛がほしい」から改題し、
文庫オリジナルのあとがきも掲載しています。
山田はこれまで出したすべての本の中でこの本が最も好きです。



『おとなの進路教室。』河出書房新社
「自分らしい選択をしたい」とき、
「自分はこれでいいのか」がよぎるとき、
自分の考えのありかに気づかせてくれる一冊。
「おとなの小論文教室。」で
7年にわたり読者と響きあうようにして書かれた連載から
自分らしい進路を切りひらくをテーマに
選りすぐって再編集!



▲文庫版でました!
 あなたの表現がここからはじまる!

『おとなの小論文教室。』 (河出文庫)


ラジオ「おとなの進路教室。」
http://www.jfn.co.jp/otona/

おとなになっても進路に悩む。
就職、転職、結婚、退職……。
この番組では、
多彩なゲストを呼んで、「おとなの進路」を考える。
すでに成功してしまった人の
ありがたい話を聞くのではない。
まさに今、自分を生きようと
もがいている人の、現在進行形の悩み、
問題意識、ブレイクスルーの鍵を
聞くところに面白さがある。
インターネット、
ポッドキャスティングのラジオ番組です。



「依頼文」や「おわび状」も、就活の自己PRも
このシートを使えば言いたいことが書ける!
相手に通じる文章になる!

『考えるシート』文庫版、出ました。



『話すチカラをつくる本』
三笠書房

NHK教育テレビのテキストが文庫になりました!
いまさら聞けないコミュニケーションの基礎が
いちからわかるやさしい入門書。



『文庫版『あなたの話はなぜ「通じない」のか』
ちくま文庫

自分の想いがうまく相手に伝わらないと悩むときに、
ワンコインで手にする「通じ合う歓び」のコミュニケーション術!


『17歳は2回くる―おとなの小論文教室。III』
河出書房新社


『理解という名の愛が欲しいーおとなの小論文教室。II』
河出書房新社


『おとなの小論文教室。』
河出書房新社


『考えるシート』講談社


『あなたの話はなぜ「通じない」のか』
筑摩書房



『伝わる・揺さぶる!文章を書く』
PHP新書

内容紹介(PHP新書リードより)
お願い、お詫び、議事録、志望理由など、
私たちは日々、文章を書いている。
どんな小さなメモにも、
読み手がいて、目指す結果がある。
どうしたら誤解されずに想いを伝え、
読み手の気持ちを動かすことができるのだろう?
自分の頭で考え、他者と関わることの痛みと歓びを問いかける、
心を揺さぶる表現の技術。
(書き下ろし236ページ)



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