その3

 

その3 わたしたち、おしゃれじゃないよ?!

伊藤 なぜ、そんな制服っぽいスタイルの『Olive』の中で、
コム デ ギャルソンのスカートに至ったんでしょう。
岡戸 マーガレット・ハウエルや、コム デ ギャルソンは、
やっぱり当時憧れのブランドだったんです。
高かったし、素材がよかったから。
だから『Olive』では、
「憧れブランドページ」で登場してたんです。
きっとわたしも取材に行ったか見に行ったかして、
買うようになったんでしょうね。
『ハナコ(hanako)』が創刊の頃、
ちょっとそちらに移り、
1年もしないうちに、また『Olive』に戻って。
その2回目に戻った『Olive』が長かったんですけど、
その頃には黒いタイツに黒いスカートでした。
伊藤 もう出来上がってた、岡戸スタイルが。
たまに、フワッとしたスカート履きたいとか、
ないんですか?
岡戸 あ、履いてたんですよ、そういえば!
マーガレットハウエルのワンピースを!
伊藤 着てたんですね。
岡戸 それがまた同じ形のワンピースを、ずぅっと着てて。
伊藤 それはどういう形のもの?
岡戸 ウエストも切り替えない。ただのストーンとした形。
夏は薄い麻だし、コットンもあるし、
冬になると、ウールになっていくの。
それが、マーガレットハウエルの定番だった。
その同じ形のワンピースを、本当によく買ってましたよ。
白いシャツの前でした。
伊藤 つまり、岡戸さんは、
1回気に入ると、もうずっとそれを着る。
岡戸 そう! 面倒くさいから、考えたくないから。
伊藤 わかります、わかります。
岡戸 いろいろ迷いたくないから
手短で済ませたいのよね。
伊藤 私も、試着とか面倒くさいから、
1枚試着して気に入ると、色違いを買ったり。
岡戸 それを「違う服」って言い張るでしょう(笑)。
伊藤 だってね、違う服ですもん。
岡戸 そうよね、違う服よね。
伊藤 そのワンピース時代が何年か続いたんですね。
「今日はワンピースにしよう」じゃなくて、
もうとにかくとにかく(笑)。
岡戸 ずっとワンピース。
「岡戸さんは、100年同じ格好ね」
って言われてましたよ。
伊藤 それは、食べるものとかもそうなんですか?
気に入ったら?
岡戸 いや、そんなことないんですよ。
たぶん格好は、早く決めたいんでしょうね、何かを。
伊藤 なぜだろう?
岡戸 おしゃれじゃないんだと思う。
逆おしゃれだと思う。
伊藤 そうかな?
ここまで徹底してるっていうことは、
やっぱりおしゃれなんだと思うんですけど。
岡戸 いや、違うと思う。
伊藤 ていうか、おしゃれって何なんですか?
岡戸 ねぇ。それこそ伊藤さんに聞きたい。
どういうことがおしゃれなの?
伊藤 私は何にも考えていないんですよ。
ノリで「これ着ちゃお!」ってかんじ。
岡戸 本当? でも、着ること自体、
迷うこと自体、楽しいですか?
伊藤 迷う? 迷わないです。
岡戸 (笑)えぇと、じゃあ、服を買う時も、
服に何を合わせようかっていう時も?
伊藤 あ、そんなの考えない。
岡戸 家でも?
伊藤 家でも考えないですね。
岡戸 着たいもの着るだけ?
伊藤 そうそう(笑)。
だから、コーディネートを考えるのが面倒になって
ついついワンピースを選んじゃう。
岡戸 ほら。私もどっちかというとそうですよ。
伊藤 あ、そうか。
岡戸 面倒くさいんですよ、
着るものについて、いろんなことを考えるのが。
伊藤 この前、美容院で雑誌見てたら、
「重ね着がすごく上手い人」の
「ある日の重ね着」が紹介されていて。
私の一週間分くらいの服の量を一日で着てる。
ということは、それだけコーディネートを
考えてるってことですよね。
色合いとか、服の分量とか。
すごいなぁと。
‥‥え? ってことは私たち、
面倒とか言ってないでもっと考えないとだめ?
岡戸 おしゃれじゃないっていうことよ!
楽しんでないもん(笑)。
伊藤 なんかもう、
「えぇい、これ!」みたいな。
岡戸 それでも伊藤さんは
「かわいいなぁ」っていう印象があるから。
伊藤 それは、私が、
かわいいものが好きだということなんですよ、たぶん。
かわいいワンピースとか、リボンも好きだから。
岡戸 あと、ちょっと大人できれいめな感じよ。
伊藤 ふふふ、それで、みんなが騙されてる?
岡戸 騙してるんだ、あなたは(笑)。
伊藤 だって何もコーディネートしてないです。
岡戸さんも「服装にすごく哲学がある人だ」
みたいに思われてるけど、実は面倒くさい(笑)。
‥‥そんなことに話持って行っちゃだめじゃない?
だめだめ!
もっとキリッとした、真理的なものを、
岡戸さんから発見したい。
岡戸 でも、概ね正しいと思う、それで。
伊藤 わたしは買い物は好きなんです。
岡戸さんはどうですか?
岡戸 私はね、好きじゃないと思います。
お店は怖いし、どこのデパートも
上(高級店)のほう行ったら怖いし(笑)、
下のほうは、「え? これ、ちょっと
合わないんじゃないの?」っていうやつだし。
だから、小さな店を1人でやってます、
くらいの規模だと「そこなら行ける」と思って。
基本、「怖いなぁ」って思ってるわけですよ。
男の人はそういうこと、ないの?
── 男もありますよ。
デパートの上のほう怖いです。
伊藤 やっぱり。
岡戸 やっぱり。
── たとえばスーツの売り場が2フロアあって、
上の売り場は経営者が着るスーツで、
その下の売り場は、会社員が着るスーツって、
そういうことが明確なんです。
岡戸 そんなこと書いてないでしょう?
── 書いてないです。
伊藤 でも、わかる?
── わかるんです。
岡戸 質が違うの?
── 全く違います。
とくにデパートはそういうところが明確。
岡戸 階級社会なのかな、日本も、そういう意味では。
── さらに高級ヨーロッパブランドのフロアがあったり。
緊張しちゃいますよ。
それこそズッカもコム デ ギャルソンもある
ごちゃまぜの楽しいフロアもあるので、
そういうところを見るのは楽しいですけれど。
岡戸 だから、買い物行きたくないんですよ、もう本当に。

(つづきます)



2013-03-20-WED


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写真:有賀傑