岡戸絹枝(おかどきぬえ)さん

出会いは『ku:nel』の取材でした。
「伊藤さんのルーツが知りたい」
「どうやって“伊藤まさこ”ができあがったのか、
 ぜひ取材させてほしい」と、
わたしのことを、もちろん自宅、
そして実家までいらしてくださり、
徹底的に取材をしてくださったんです。
そのときのことがとても印象的で、
わたしは岡戸さんを編集者として、
また年長の友人として
とても尊敬するようになりました。

ふだんならお断りするかもしれない内容でも、
岡戸さんからの依頼には、
安心して引き受ける自分がいます。
以前、台所の取材がしたいという
お話をいただいたとき、
じきに引っ越すから‥‥とお断りしようとしたら、
岡戸さんは、こんなふうにおっしゃって。
「私は、伊藤さんの
 “台所のありよう”が知りたいんです。
 記事が出るとき、その台所を使っていないとしても、
 伊藤さんと、伊藤さんの台所とのかかわりかたは、
 きっと、同じはず!」
‥‥すごい! と思いました。
そんなふうに言われたら、
わたしも「よし!」って気になりますよね。

それにしても、『ku:nel』って、
そうやって作っていたんだなあって思います。
編集長時代の岡戸さん、たいへんだったことでしょう。
毎回、全力投球ですもの。
でも、こうした先輩がいてくださることが、
なによりわたしの励みになっています。
「私もがんばらなくちゃ!」という
気持ちになりますし、
忙しくて流されてしまいそうになったときに、
“ただなんとなく”で、仕事をしてはいけないぞ、と、
岡戸さんのことを思い出して、
自分を奮い立たせているんです。

『週刊平凡』記者を経て、『Olive』編集部へ。
『Hanako』『Olive』編集部を経て、
97年より99年まで『Olive』編集長に。
2003年には『ku:nel』を創刊、
2010年まで編集長を務めたのち、
同年マガジンハウスを退社。
現在はフリーの編集者として、
『talking about』の編集をおこなっています。

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