「あたり茶」について、
糸井重里があらためて語りました。

ーー
2012年12月に、はじめて
「ほぼ日のにほん茶」を販売したわけですが、
販売開始30分で「あたり茶(粉砕茶)」が
2種類とも完売しました。
あわててTwitterでも完売をお知らせしたのですが‥‥
とても、みなさんに
受け入れていただいたという実感があります。
糸井
「待ってたんだよー」という感じでしたね。
ーー
はい。
茶葉も発売3日で完売になりましたが、
とくに「あたり茶」は早かったです。
その「あたり茶」は、
糸井さんが「うおがし銘茶」さんに
「粉にしたお茶も作ってほしい」と
お願いしたことからはじまりました。
糸井
そうでした。
おまけのように言ったんです、
自分がほしかったから。
ーー
粉砕したお茶がほしかった。
糸井
ええ。
そもそも、「急須でお茶をいれる」ことを
ふつうにやる人とやらない人がいて、
ぼくはその中間なんです。
ちゃんといれるときと、
飲みたいと思うだけで
やめちゃうときがあるんですよ。
ーー
はい。
糸井
社内をみても、みんなが飲んでいるお茶って、
だいたいペットボトルか
ティーバッグのお茶なんです。
簡単でいいんだけど、
それほどおいしくはないですよね。
じゃあ、なんで急須でいれないかっていうと、
急須を用意して、飲み終わったら洗って
お茶がらを捨てて‥‥っていう、
過程の大変さがあるからなんです。
オフィスだったら、なおさらですよね。
ーー
はい。そもそも急須を
会社に置いてない場合もありますし。
糸井
そう。でも、みんなやっぱり
おいしいお茶を飲みたいとは思っているんです。
なんだか、お茶に関しては
「こうありたい」っていう目的と
その途中の工程の面倒くささの
バランスが取れてないな、と思っていました。
で、そんなことを思っていたある日、
『ためしてガッテン』(NHK総合テレビ)という
テレビ番組で、お茶の葉をすって
粉状態にしたものを飲むと健康にいい、
ということをやっていたんです。
それをみて、すぐにAmazonで乳鉢を買いました。
あれ、この話は、以前しましたよね?
ーー
はい。でも、「あらためて語る」というテーマなので
もう一度、聞かせていただきたいなと。
それで、乳鉢‥‥ちいさなすり鉢のような。
糸井
そうです。
自分で茶葉をコリコリとすって
お湯を注いで飲んでいました。
乳鉢でするのって、ちょっと面倒なんですけど、
それでもときどきやっていたんです。
ーー
急須でいれるよりもたいへんそうな‥‥。
糸井
そうなんです。
でもそのことがあったから、
「うおがし銘茶」さんと組むときに
「そうか、専門のお茶屋さんだったら
 粉にするのも簡単じゃないかな」と思ったので、
ちょっと声をかけたんですよ。
肉屋さんでコロッケを買うときに
「ソースもかけといてもらえます?」
って言うのと同じように、
「あ、ちょっと粉のもほしいです」
みたいな感じでお願いしました。
ーー
そうしたら、
イメージ通りのパウダーの茶葉を
つくってくださいました。
糸井
試作品を見て、
これは会社で飲むのにもいいと思いました。
仕事の合間に、手軽においしいお茶がいれられて
お茶がらを捨てる場所もいらない。
「これ、すくなくとも自分はすごくほしい‥‥」
そう思えるということはつまり、
みんなによろこばれるかもしれないということです。
ーー
なるほど‥‥。
「あたり茶」という名前も、
糸井さんが思いついたものでした。
糸井
そう。この名付けの話も、
前回の繰り返しになっちゃうけど‥‥。
茶葉を粉砕しているのは事実でも
「粉砕茶」と直球すぎる名前にするのは、ちょっとね。
「何とか粉砕!」みたいに
デモをやってるんじゃないんだから(笑)。
次に案として出ていた「すり茶」もどうかなぁ、
と思っていたときに、
「あ、そうだ、『する』という言葉は縁起をかついで
 『あたる』に言い換えられるから、
 『あたり茶』にすればいいんだ!」と‥‥。
ーー
思いついたとき、その場にいましたが、
名前がパチーンと、
お茶にはまっていくように感じました。
糸井
ぼくは、あのー、むかし、
コピーライターをやってたので‥‥。
ーー
はい(笑)。
その「あたり茶」を販売したところ、
興味を持ってくださる方がとても多くて
私たちも驚きました。
とにかくいままで世の中に、
こういうものがなかったと。
そのままでもおいしい良質な茶葉を、
わざわざ粉にするということ自体が
常識的にはなかったことなんだそうです。
糸井
「あたり茶」のいいところは、
しっかりおいしいところですよね。
最初にパッと感じるおいしさと、
飲んだあとの余韻としてのおいしさもあります。
ーー
茶葉が完全には溶けないから
粉が湯のみの底に溜まるのもたのしいですよね。
お湯を足すことで
2煎目、3煎目、と飲み続けられますし。
糸井
(湯のみを持って)
こうやって湯のみをゆすりながら
最後の濃くなったところまで
ぜんぶ飲んじゃってもいい。
この沈んだ「まりも」みたいなのは
抹茶ケーキみたいなおいしさがあるんですよ。
いかにも「緑を取り入れてる感じ」がいいんです。
ーー
体にいいことをしているっていう
気分的な良さもありますね。
前回の販売の際に
購入した乗組員も多かったんですが、
「ひとつしか買ってないから、なくなると困る」
「次はいつ販売するの?」と、よく聞かれました。
糸井
気軽にいれられて、おいしいからね。
ーー
社内の反応はもちろん、
みなさんからの感想も、とてもたのしみです。
糸井
うん‥‥。
気取ってないのに、シャキッとしています。