奈良美智インタビュー  NOWHERE MAN  IN THE SPACESHIP  ひとりぼっちの絵描き。
奈良美智さんが久々に登場です。 いま、着々と進行しつつある、 奈良さんのカタログレゾネの話を軸に、 奈良さんがなぜ描くのか、とか、 いつからどんな気持ちで描いているか、とか、 奈良さんの根本を支えるようなテーマについて じっくりとことばが交わされました。 大きな話だけれど、重くはない。 どうぞお楽しみください。
奈良美智さんPROFILE
#1	ラブレターみたいな絵。 2010-11-17-WED
#2	それだけで、うれしい。 2010-11-18-THU
#3	なんで描いてるんだろう? 2010-11-19-FRI
#4	イラストレーターには向いてない。 2010-11-22-MON
#5	ひとりぼっち。	2010-11-23-TUE
#6	やっちゃいけないこと。 2010-11-24-WED
#7	若いころのことが、いまわかる。 2010-11-25-THU
#8	昔描いた絵を、いま直せる?	2010-11-26-FRI
#9	NOWHERE MAN IN THE SPACESHIP.	2010-11-29-MON
#10	ひとりじゃないと味わえない。 2010-11-30-TUE
糸井 レゾネ(全作品集)をつくるんだって?
奈良 そう。
糸井 若いころの作品もぜんぶ?
奈良 うん。
糸井 どのくらいになるんだろう。
奈良 なんか、5000点近く収録されるみたい(笑)。
1冊じゃ収まらないから、2冊になるのかな。
とにかく、紙に描いたものとかは
めちゃたくさんあるから。
糸井 「持ってる人いませんか?」って
呼びかけたわけでしょう。
奈良 そう。
数は、すごいことになっていて。
糸井 覚えてない絵とかも出てきたりする?
奈良 うん、たくさん出てきた。
でも、やっぱり、見たら思い出す。
糸井 ああ、そうなんだ。
奈良 うん。
たとえば、酔っぱらって、
どこかの店で描いたようなものって、
描いた記憶はないんだけど、
その絵をパッと見た瞬間に、
「あ、描いた!」ってありありと思い出す。
糸井 そういう絵ってさ、
存在も忘れちゃってるくせに、
絵の中にすごく自分が出てたりしない?
奈良 うん(笑)。
糸井 それって、怖いよね。
怖いし、けっこう恥ずかしい。
奈良 自分じゃないようだけど、自分なんですよね。
なんていうか、ボクサーとかで、
パンチ打たれて、一瞬気がとんでるんだけど、
戦い続けて勝っちゃって、
勝ったときのこと覚えてない、とか。
糸井 そうですよねぇ。
若いときの絵なんて、
そういうものの集合なんじゃないか。
奈良 そうかも(笑)。
紙に描いたやつは、ほとんどそういう感じ。
ほんと恥ずかしいし、恥ずかしいものほど、
「オレだ」って思うものが残ってる。
糸井 いいねぇ(笑)。
その気持ちはなんだか、貴重だねぇー。
奈良 じつは、うちにまだ、
かなりの量のドローイングがあるの。昔の。
それは、まぁ、誰にも見せないでおけば、
そのままで終わるから、いいんだけど。
糸井 それはなに、隠してるわけ?
奈良 いや、隠してない(笑)。
ドイツで描いてたときのものが
そのまま残ってるだけなんだけど。
糸井 捨てたくはないんだよね。
奈良 捨てたくはない。
糸井 昔、書いたラブレターみたいなものかな。
奈良 あ、そうですね。
そういうのは、ヤバいです(笑)。
糸井 ヤバいよねぇ。
ヘタさも、ウソも、
ぜんぶ自分にはわかってるもんね。
奈良 ラブレターっていうより、
もう、そのものずばり、
好きな子にあげた絵とかが出てきたら‥‥。
糸井 うわー、たまんないな、それ(笑)。
奈良 ははははは。
糸井 つまり、そこには、
非常に不純なものが入ってるわけですよね。
奈良 入ってるんだよね。
やっぱり人に見せるためっていうか、
特定のこの人のためにって描くから、
不純っていうよりも、なんかこう‥‥。
糸井 気に入られようとしてますよね。
奈良 そうそう(笑)。
なんなんだろうね。
糸井 まぁ、それこそが純粋だ
という言い方もできるけど、
自己のうちなるほとばしりを表現するのが
自分の絵だとすると、
その、気に入られようとしている絵は‥‥。
奈良 自分じゃない。
でも、めっちゃ自分。
うーん、なんだろうね?
糸井 でも、音楽なんてそういうものばっかりでしょ。
セレナーデじゃないけど、
その、あなたを口説くために歌ってる歌って
ようするにそういうことだよね。
奈良 そうそうそう。
だから、はたから見てると、
すごい滑稽に見える。
糸井 で、同時に、
「だからいい!」ってところも。
奈良 うーん‥‥他人がやってたら、
「だからいい!」って
やっぱりオレも言うだろうね(笑)。
糸井 言うだろうね(笑)。
奈良 でも、自分がそれやってるのを見ると
穴があったら入りたいぐらい(笑)。
糸井 ははははは。
奈良 でも、人がやってたら、
「その気持ちは大事だよ!」とか。
糸井 言うだろうね。
「そのギクシャクしてるとこがいいんだよ!」
とかね。
奈良 うん、うん。
糸井 でも、誰もがそれは、やってますよね。
奈良 そうだよね。
糸井 やってると思うよ。
奈良 やってない人をオレは疑うな。
糸井 ねぇ。いい話だなぁ、それ(笑)。
‥‥うーん、今日は、
この話を聞けただけでも、いいかもしれない。
奈良 そんな話は今日は‥‥あ!
(ICレコーダーを見つけて)
もう、はじまってるの!?
ウソ、まったく知らなかった。
糸井 ははははは。



To Be Continued......


2010-11-17-WED

1983年以降の奈良さんの 全作品収録を目指している 「奈良美智カタログレゾネ」 (2011年末リリース予定)について、 くわしくは、こちらをどうぞ。  The Apple in My Heart

撮影協力:高橋コレクション日比谷

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