中沢新一さんの真正面からの真剣ふりおろしは、
会場のすべての人々の魂をつかんだと思います。
1500名の聴衆に「静けさのある興奮」が訪れました。

糸井重里に邪魔されながら、
タモリさんに突っこまれながら、
旧石器時代から現代につながる人間たちの姿を、
そして未来に向けての人間たちの希望を……
目の前に、想像させてくれたのです。

「はじめての中沢新一」
イベントの日の語りを、贈りもののように、
ほぼすべて、おとどけしてゆきます。

(これまでの「はじめての中沢新一」連載はこちらです)



第50回 今日だけでは済まない

タモリ 大学でやっていることは、
「じゃあこれからどうするんだ」
ということが
ほとんど抜きに語られているでしょ。
中沢 そうなんです。
どうすぐに役に立つんだとか、
政策とか経営とか社会学の方に
いっちゃうんですよ。
そういうんじゃないでしょう。
 
タモリ ほぉ。
 
糸井 社会学にいくにしては、
社会学も
ちゃんと教わってないっていうか。

ぼくは広告屋じゃないですか。
さる大学で
一回来てくださいといわれてやって、
先生がなんにも知らないんですよ……。
つまり、広告がどういうものか、
ということが、
やったことがある人は
先生なんかしてないんですよ。
 
タモリ うん。
 
糸井 つまり、そこに行きかけて
あと戻りした人が
先生をやっているわけですよ。
 
タモリ 評論家と同じですね。
 
糸井 「むずかしいから
 ぼくはうまくいかなかったよ」
ということになってしまう。
 
中沢 (笑)
 
糸井 現役の大工の棟梁が
家を建てることについて
教えるっていうことと、
同じようなことが必要なわけです。
実用の学問にしてもね。
 
中沢 だってぼく
宗教学をやってるけど、
自信があるのは
宗教というものをやっている人たちの
直伝ていうか、
どういうことが起こるか、というのを
大体体験でわかっていますから。

それがなくて、
宗教がどうたらこうたら
いう人たちを見ていると
本当に先生やっていていいのかな、
と感じますね。
 
タモリ ほぉ。
 
糸井 先生という形でプールしている、
じかに仕事をしなくてもいい人たちの
数というのは
ありがたい話なんですよ。
 
中沢 社会福祉ですからね。
 
タモリ 守られているところがありますからね。
 
糸井 それが
なくなっちゃったときの
せちがらさというのは、まぁ思いますよ。
 
中沢 ありますね。
 
糸井 しょうがない会社で、
しょうがない人間が、
左うちわで「チミ、チミ」と
やっているのも、
まぁ福祉としてはいいと。
 
タモリ それ、貨幣経済の側にたった
ものの見方ですよ。
 
糸井 (笑)そうですね。
 
タモリ 能力によってね。
 
中沢 それがあったから、
こういう状況に
追い込まれてしまっているんですね。
 
糸井 ぼくは、
先生たちを選別しろ、
だとかはいわないですよ。
だけど、違う道を探しやすくなった今は、
違う道をいく邪魔しないでほしいという。
 
中沢 芸術人類学というのは
違う道、違う位置っていうことで、
しかもぼくは熟考を重ねていますし、
一度、
大失敗もしているくらいですから、
そうそう、間違いはしないだろう、
と思っているんですけれども。
 
タモリ これから
いろんなことが出てくるんだと思うので、
今日だけではすまないでしょうね。
どんどん広がっていくんだろうと思います。
 
中沢 新聞社、大学、研究所。
 
タモリ これは三つ一緒になったんですから。
 
糸井 そうですね。毛利元就、三本の矢。
 
タモリ ……もうそろそろ、
駐車場がしまるので、
ほんとに終わらないと、
話はつきませんよ。
打ちあわせだけで
これ以上かかったんですから。
 
中沢 芸術人類学について話す15分は
じゃあ、これでいい?
 
タモリ 次にまわしたいと。
 
糸井 そうですね。
まわしましょう!
……そういう終わり方です。
中沢新一さんでした。
 
タモリ どうもありがとうございました。

(イベントの会話を文字にした連載は、
 今日でおわりです。
 ご愛読、ありがとうございました)
 
2006-02-07-TUE


 

2005-12-20 第1回  生きていてよかった
2005-12-21 第2回  思わず、知ったかぶりました
2005-12-22 第3回  東京って、ヘンだなぁ
2005-12-23 第4回  東京は、いちばんおもしろい
2005-12-24 第5回  東京は縄文につながる
2005-12-25 第6回  神聖な場所
2005-12-26 第7回  縄文の聖地が神社になった
2005-12-27 第8回  聖地は岬なんです
2005-12-28 第9回  魂を送りかえすこと
2005-12-29 第10回  日本人の精神構造は
2005-12-30 第11回  人類の精神は止まらない
2005-12-31 第12回  1万年の記憶
2006-01-01 第13回 流行は、ここでしかあり得ない
2006-01-02 第14回 境界の魅力
2006-01-03 第15回 縄文は歴史の前戯?
2006-01-04 第16回 なんで、誤解していたんだろう?
2006-01-05 第17回 ヨーロッパ人は戦争がうまい
2006-01-06 第18回 アジアは「坊ちゃん」だもんね
2006-01-07 第19回 ジャイアン政治
2006-01-08 第20回 これからの東京の開発は
2006-01-09 第21回 ソフトと地形は結びつく
2006-01-10 第22回 タモリさんの感動論
2006-01-11 第23回 興奮、なさってます?
2006-01-12 第24回 岡潔さんという天才
2006-01-13 第25回 心の奥に注ぎこまれたもの
2006-01-14 第26回 ぼくの、いちばんの基本
2006-01-15 第27回 レヴィ=ストロースに出会う
2006-01-16 第28回 その矛盾には意味がある
2006-01-17 第29回 「歴史」がはじまる瞬間
2006-01-18 第30回 芸術と宗教の源は
2006-01-19 第31回 矛盾が芸術を生みだした
2006-01-20 第32回 よくわからなくなりました
2006-01-21 第33回 ぼくは、歩きはじめました
2006-01-22 第34回 生と死がつながる
2006-01-23 第35回 「ひねり」こそが重要である
2006-01-24 第36回 都市と国家の成立
2006-01-25 第37回 日本人の心の構造は
2006-01-26 第38回 論理が人間を分離する
2006-01-27 第39回 人と人の間の通路
2006-01-28 第40回 心の中の光
2006-01-29 第41回 一神教の考え方
2006-01-30 第42回 対称性人類学とは何か
2006-01-31 第43回 贈与が求められている時代
2006-02-01 第44回 数学は生命の燃焼
2006-02-02 第45回 マルセル・モース
2006-02-03 第46回 孤児のような岡本太郎
2006-02-04 第47回 これからやりたいこと
2006-02-05 第48回 行為がいちばん重要
2006-02-06 第49回 学問を生き延びさせたい


    
メールを送る とじる 友達に知らせる