(これまでの「はじめての中沢新一」連載はこちらです)




第22回 タモリさんの感動論

糸井 「カイエ・ソバージュ」のシリーズは、
ぼくは、谷川俊太郎さんが
『対称性人類学』を、おもしろいと
言ったのがきっかけで、読みました。
タモリ ほうほうほう。
中沢 詩人がほめてますからね。
タモリ 詩人がほめてますね。
糸井 あれは
どのくらいの期間で出たんでしたっけ。
中沢 2年半くらいですかね。
ぼくとしてはめずらしく、
半年に一回というペースを守ったんです。
気合い入ってたんですね。
タモリ 今日、これからきけば、
だいたいのことは、
ほとんどすべてわかると。
糸井 しかもDVDであらかじめ
この内容をしゃべったものがあって。
もう、何重にも
鍵をかけているんじゃないかという。
タモリ 鍵はかけてないよ。
糸井 (笑)何重にも安全な、
聞き漏らしのないような
構成に、なっております。
中沢 じゃあ、
ぜんぜん新しい話をしようかなぁ。
糸井 それも、いいですよね。
タモリ いや、
さっきだって、新しいのが
どんどん出てきたもん、
貝塚の話とか……。

あの、私はだいたい
感動したり、感激したりする人間が
きらいなんですよ。
糸井 (笑)感激したな、
そんな人がいるなんて!
タモリ あの、ぼくは
夢とロマンスが大きらいなんですよ。
わかりますか?
糸井 (笑)はい。
タモリ なんでかっていうと、たとえば
ディープインパクトが勝ちまして、
インタビューで男が
「いやぁ! 感動したなぁ!」
って叫んでいるんですけど、
ちっとも感動しないんですよ。
糸井 ディープインパクト本人は
感動してないですよね。
タモリ ええ、走ったってだけの話で。

なぜ、俺が、感動したりするのを
控えていたかと言いますと……。
中沢 (笑)
糸井 控えていたんですか!
タモリ 控えてました!
感動する人間ていうのは、
だんだん
感動がなくなっていくと思うんです。

と、同時に感動している俺っていうのは、
人間的に素晴らしいだろうと……。
中沢 (笑)あぁ。
タモリ そう言っているようなものなんですよ。
糸井 アピールですね。
タモリ なんでもかんでも
「カワイイ」と言える女の子もそうです。
「カワイイ」と言える私がかわいいみたいな。
糸井 うん。
タモリ でも、人類にも、
いつか感動できるようなときが
くるだろうと思うんです。
その日のために、俺は感動しないんだ。
糸井 (笑)すごい!
「レストランに行くからごはん食べない」
みたいなことですね。
タモリ 「夢なんか語らねえんだ」と。
夢があるから絶望があるわけですから。

(明日に、つづきます)
 
2006-01-10-TUE


もどる