メール紹介⑦

震災のときに海外に
滞在していた方からのメール

こんにちは、マツザキです。
引き続き、「東日本大震災を実感していない自分」
というテーマに寄せられたメールを紹介します。
今日まで続いたメール紹介編は、今回が最終回となります。

今回は、東日本大震災が発生したときに
海外に滞在していた方からのメールを、2通紹介します。
紹介するメールは、平成28年熊本地震が起きる前に
お送りいただいたものです。

メールを送ってくださったおふたりは、
ご自身と、日本で震災を経験した方との間には、
震災への実感に違いがあるということを理解して、
一歩引いた目線から、震災のことを考えているようです。

それでは、メールを紹介します。

誰もが東日本大震災に
向き合わなければいけないわけではない。
(たえさん)

東日本大震災があった3月11日、
私は日本にいませんでした。
旅行で海外を回っており、
震災が起きたことを知ったのは
おそらくモロッコ辺りだったと思います。
船旅に参加しており、
帰国したのは震災発生からちょうど1ヶ月後でした。

震災直後は、お店の食品が買い占められたり、
新聞に広告が載らなかったりしたと聞きましたが、
震災から1ヶ月経って
少し落ち着いた頃に私は帰国したので、
どれほどの混乱があったかを実感できませんでした。

その後被災地へボランティアで2回行きましたが、
結局、自分事にできないまま年月が過ぎていっています。
向き合うにはあまりにも大きい被害でしたし、
それに加えて震災のときに日本にいなかったので、
向き合おうとする力がどうしても湧きづらいです。
今も震災を、海の向こうで起きた出来事のように、
思ってしまうことがあります。

ただ、失礼な言い方かもしれませんが、
日本人全員が東日本大震災に
向き合わなければいけないわけではないのかもしれません。
向き合わなくてもいいから、
何があったのかを知っておくだけでも
いいと考えています。

震災を経験しなかった人も、
それはそれで運命なのではないかな、と思います。
被災地でずっと頑張っている方がいらっしゃるように、
私もまずは自分の日々を頑張りたいです。

東日本大震災を通して、
「他者理解とは何か」を考える。
(春樹さん)

東日本大震災当時、
歴史学部の大学院生だった私は、
イギリスに調査旅行に来ていました。
朝、目が覚めると、秋田の実家から
「家は大丈夫だから」とメールがあり、
何が大丈夫なのかと思ってホテルのテレビを観ると、
津波の映像が流れていました。
ひどい災害が起きているのに、
他の宿泊客は普段通りの様子だったので、
なんとも言えない悲しい気持ちになりました。

こうやって、今あらためて
東日本大震災のことを思い返すと、
震災発生時に日本にいなかった自分にとって、
自分の思う東日本大震災は、
当時日本にいた人にとっての東日本大震災とは
おそらくこれからも
違うものであり続けるのだと感じました。
震災発生時イギリスのホテルにいた自分と、
東京で震災を経験した人では、
震災の経験や記憶は違ったものになるだろうし、
たとえ同じ場所で震災を経験したとしても、
個人のバックグラウンドによって
震災の記憶や感じ方は違うのだと思います。
ある人の震災の経験や記憶が、
他の人のものに比べて優れていたり
劣っていたりすることはないと考えています。

時間や場所、背景の違いで
震災の経験は異なります。
誰もが同じ経験や感じ方を
しているわけではないと理解して、
他人の経験を想像することが大切だと思います。
そして、誰かが何か震災について言ったときには、
それに耳を傾け、否定せず、
考える材料にするべきなのかな、と感じています。

東日本大震災を思い出し、記憶することは、
「他者理解とは何かを考える」ことが
含まれているのではないでしょうか。

みなさんから届いた172通のメールを読んで
僕が強く感じたことは、
月並みで基本的なことかもしれませんが、
「東日本大震災についての経験や考え方は、
 人それぞれ違う」ということと、
「それぞれの考え方を単純に肯定することも、
 否定することもできない」ということでした。

今回紹介した2通のメールは、
僕がすべてのメールを読んで感じたことを、
整理してくれていると思います。

みなさんから届いたメールに綴られていた
それぞれの考え方に影響され、東日本大震災について、
よりスムーズに考えることができるようになった部分と、
考えることがすこし難しくなった部分がありました。
たしかに、自分の考えが進んでいる実感はあるのですが、
まだ、「自分には自分の考え方があるんだ」と、
迷うことなく突き進めるほどではない気がしています。

ただ、なぜかははっきりとはわかりませんが、
どうして僕が東日本大震災に
向き合いたいと思っていて、
できることをしていきたいと
思っているのかということが、
コンテンツを始めた当初より、
わかるようになってきています。
その変化には、熊本地震が起きたことも、
多かれ少なかれ、関係していると思います。

このコンテンツがこの後もつづくのかは、
今は決まっていませんが、
僕は今後も、東日本大震災について、
知って、考えて、できることをしていきたいと思います。

さいごに、このコンテンツを再開した
先週月曜日から今日までの間にも、
メールをいただきました。
ほんとうに、ありがとうございました。
すべて読ませていただいています。

それでは、終わります。
お読みいただき、ありがとうございました。

2016-05-18-Wed