私と芸術、私の友情。糸井重里 私と芸術、私の友情。糸井重里
いま東京では、横尾忠則さんの作品が
あちこちで見られます。
国内外の団体がここぞと力を出し合い、
類稀なる存在をあらためて知らしめる、
しずかで大きな芸術活動です。
ほぼ日もそのちいさな一端を担います。

8月22日まで渋谷PARCO8階で、
横尾さんの素顔にスポットをあてる
「YOKOO LIFE 横尾忠則の生活」展を開きます。
その展示内容は糸井重里との対話集
『YOKOO LIFE』が軸になっています。

糸井重里に、横尾忠則さんについて訊いてみます。
第1回 「あたりまえ」の勇気。
──
(菅野)
糸井さんはこれまで、
横尾忠則さんについて
「30世紀まで名を残す人」
という言い方をなさってきましたが。
糸井
ほんとにそうだね。
「そうとしか思えない」という、
そんな言い方です。
──
東京都現代美術館で
大規模な展覧会がオープンしたところですので、
作品のすごさはみなさんに
美術館でごらんいただくとして‥‥。
糸井さんから見て、
横尾さんのすごいところって、どこでしょうか。
糸井
そうだね。
「自由」かな。
──
自由。
糸井
横尾さんってさ、
「それ、どこからつかんできたの?」
ということばかりするでしょう。
──
ああー。
糸井
たとえばぼくらが子どもになって、
いっしょに裏の空地や森に、
カブトムシを捕りにいったとするじゃない? 
横尾さんは、同じように出かけても、
見たこともないようなグニョグニョしたものや、「何!?」というようなものを
いっぱい捕ってきちゃうんです。
「お前、いっしょにカブトムシ捕りに行くって
言ったじゃないか!」
と、みんなに突っ込まれたとしても
横尾さんは平気で、
虫かごに入り切れないようなものを
いっぱい捕ってきたうえに、
そのかごの中を見ると、
「これ、図鑑にも載ってないぞ」
なんてことが、どんどん起こる。
あれこれやっているうちに
「あれれ、まだうしろからついてくるやつがいたぞ」
と振り返ったらおばけだった、みたいな、
横尾さんは、そういう人ですよね。
──
わはははは。
糸井
だよね、ほんとに。
写真
──
しかも(笑)、そういう人でありながら、
それが「ただカブトムシを捕ってきた人」より、
当然のことをしてきたような
気配がするんです。
糸井
そうですね。
「だって、いたんだもん」と
平気で言う。
──
なんだか、一瞬で説得されるというか‥‥。
糸井
もうちょっと正しく言うと、
説得できないものについても
説得するんじゃないかな。
つまり「どうしていいかわかんない」というものって、
この世にはあるじゃない?
それはもう「わからない」でいいんですね。
──
横尾さんは、人生も作品も、
未完のままがいいとおっしゃいますね。
糸井
そのとおりです。
──
本の『YOKOO LIFE』の糸井さんとの対話のなかで
横尾さんが、絵を描くときにいちばん大切なものは
勇気だとおっしゃっている部分があります。
あれが、私にはものすごく印象深くて。
糸井
同じことを自分も思うときがあります。
「結局どうすんの?」という瞬間って、
大なり小なり誰にだってあるでしょう。
そのたびにみんなおそらく
「いいもの」を選んだような気がしていると思います。
そのときの満たされた喜びのようなものと、
横尾さんの言う「勇気」って、
同じ正体のような気がするんだよね。
──
決断のときの自己満足感と、勇気が。
糸井
もしかしたら赤塚不二夫さんの
「これでいいのだ」にも通じるのかな。
自分が下した結論に対して、
誰かに何か、意見を言われることを想像もしない。
勇気はとても大事だけど、
あたりまえのもののような気がします。
だからこそ、勇気がない状態というのは、
やっぱりあまりよくないよ。
だってその、あたりまえの状態に行けてないんだもの。
あたりまえのことなのに、
ちょっとずらしてみたり、引っ込めたりしてしまう。
──
自分で思わず決断しているときは、
「あたりまえ」のいい状態なんですね。
だけど振り返ってみれば、
自分の決断が失敗だったこともあるわけで、
ときには迷いも生じます。
糸井
でも、横尾さんだって、
いつも「できた」から
ああなったのではないと思います。
「できたときがあった」ってことでしか
ないんじゃないのかな。
「これじゃ違うな」ということも、
自分でものすごく見てきたと思います。
「OKか」または「OKじゃなかったか」
ということは、まったくもって、
自分で答えを出すしかないんだよ。
勇気は、絵筆の1回、瞬間の決断に思えるけど、
その前後にものすごくたくさんの
道の層が見えるんです。
横尾さんを見ていて、
瞬間的に「はい!」と、線が決まったとは
思えないでしょう。
──
そうですね。
糸井
みんなが横尾さんのようではないとは思うけどね。
でも、決断していくことって、
そういう複合的なものであると思う。
写真
(明日につづきます)
2021-07-20-TUE


この夏、横尾忠則さんの作品が
東京のあちこちで見られます。
ほぼ日は渋谷PARCO8階「ほぼ日曜日」で
横尾忠則さんのお人柄や生活にスポットをあてた
展覧会を開催します。

また、みなさまからの熱い要望により、
連載『YOKOO LIFE』を
糸井重里との新規対談を加えて書籍化します。



みなさま、この夏、
『YOKOO LIFE』の本を片手に
「東京YOKOOめぐり」をなさってください。
(めぐった方には横尾只海苔をプレゼント!)
写真
『YOKOO LIFE』
横尾忠則(著)

糸井重里(聞き手)

1,320円(税込)

渋谷PARCO ほぼ日曜日で
7月17日より注文販売。
7月21日(時間未定)より先行販売。
東京都現代美術館のショップ、
横尾忠則現代美術館、豊島横尾館で、
7月21日(時間未定)より先行販売。
ほぼ日ストア、全国書店で
8月3日より販売開始予定。
写真
打ち合わせや旅のあいだのおしゃべりが、
宝もののようで、聞き逃がせなかった。
だから録音機をできるだけまわした。
どうおもしろいのか、説明はできない。
そんなふうにおそるおそるはじまった、
横尾忠則と糸井重里による
「ほぼ日」のおしゃべり連載は、
通な方々のあいだでじわじわと話題となった。

「あれ、本にすればいいのに!」
という声をいただくも、
編集方針について迷いに迷い、数年経過。
この記念すべきYOKOOイヤーに、
思い切って追加の対談を収載し、
奇跡のような本を誕生させます。
本になって、さらに宝もののような、
貴重な内容です。
写真
「YOKOO LIFE 

横尾忠則の生活」
会期/2021年7月17日(土)→8月22日(日)

   11:00→20:00

会場/渋谷PARCO8階「ほぼ日曜日」

入場料/450(¥OKOO)円

主催/ほぼ日

協力/朝日新聞社



2021年7月17日(土)→10月17日(日)

東京都現代美術館 企画展示室1F/3F



2021年7月21日(水)→10月17日(日)

21_21 DESIGN SIGHT ギャラリー3



2021年7月17日(土)→9月5日(日)

丸の内ビルディング、新丸の内ビルディング



ジャケットとパンツを
2021年7月1日(木)から順次発売

ISSEY MIYAKE SHIBUYA(渋谷PARCO2階)、
A-POC ABLE ISSEY MIYAKE / AOYAMA、
ISSEY MIYAKE SEMBA、
ISSEY MIYAKE MARUNOUCHI、
ISSEY MIYAKE ONLINE STORE
写真
横尾只海苔

(よこおただのり)

プレゼントします。
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横尾さんの描き下ろし直筆文字入り!



渋谷PARCOの「YOKOO LIFE」展入口で、
東京都現代美術館で開催する
「GENKYO 横尾忠則展」のチケット
(電子チケットの画面可)をご提示の方に、
横尾忠則書きおろし文字入り
「横尾只海苔」(ホンモノの海苔)を
プレゼントします。
※「横尾只海苔」はなくなりしだい配布終了します。
「GENKYO 横尾忠則展」チケットは
観覧前、後どちらも可です。