※この内容は、2006年2月26日に開催された
 パソナグループ職博「キャリア世代のチカラ」でのお話を、
 パソナさんの許可を得てほとんどまるごとお届けしています。
第7回 「いらっしゃい」と言える国にすること。

最終回の今回は、
パソナグループ職博「キャリア世代のチカラ」の
会場からの質問をもとに、お伝えします。

質問1

私は7年半農業をやってたんですが、
なかなか食えなくて、
今は違う仕事をやってるんですけども、
永田農法の野菜って、どれくらいの
販売量・流通量というか、あるんでしょうか。
もうひとつは、トマトジュースが
おいしかったんですけども、どこで買えますか。

諏訪

流通のほうは詳しくないんですが、
ぼくの記憶では、
永田農法で契約してる農家は
全国で200件ほどあると思います。
永田先生の全国の農家を取材した本
「おいしさはここにあり(小学館)」
があるんですが
北海道のトマトからはじまって、
新潟のお米、お酒、九州のほうれん草など、
全国にどれくらいの規模のものがあるか
その本をご覧になるとわかると思います。
あと、このジュースは、
「りょくけん」
インターネットでも買えますし、
あとは「健菜」で、
通信販売でも買えます。
東京でしたら、
松屋銀座の地下1階に「りょくけん」のコーナーが、
渋谷東急百貨店の地下の「THE GARDEN」に
「健菜」のコーナーがあります。

質問2

神奈川県藤沢市で養豚農業をやっております。
うちでは、ただ養豚して売って終わりではなくて、
お客さんのところまで一貫して
農家が届けていこうということで、
藤沢の観光農園を借りて、
バーベキューパーティをして
うちの豚肉を食べていただいたりしています。
今後は、地域の活性化にも
役に立ちたいと思っているんですが、
農業の活性化と地域の活性化について、
なにかお話をお聞きできればと思います。

柳瀬

ぼくの知る限りで言いますと、
ひとつは過疎化の問題がありますよね。
ぼくの担当著者に、
養老孟司さんがいらっしゃるのですが、
養老さんは前から
「都会の人間は、参勤交代して、
 1年の半分は、百姓やったほうがいい」
って主張されている。
その参勤交代というのは、菜園や農園を
そのままビジネス化したらレジャーになる、
ということでもあると思うんです。
ある程度交通の便がいい山なんかだと、
例えば、下草刈って、木を選別して、
炭作って、きのこ狩りをやらせる、
これ全部レジャーにしてしまえばいいんですね。
東京で買うとむちゃくちゃ高い、
備長炭のもとになるウバメガシなんか
田舎に行くとたくさん生えているわけで。

山の管理だとか、畑の管理だとか、
農家のかたが、実際にやりながら
菜園・農園だけじゃなく
里山さえきれいにして、有料で開放する形で
レジャーやビジネスにできる可能性はあるはずです。

諏訪

以前、NHKの番組で取材したんですが
埼玉県比企郡小川町では
NPO団体が中心になって
生ゴミを資源化するという事業が行なわれています。
もともとは市役所が集めて
可燃ゴミで燃やしちゃうような
住宅街から出た生ゴミを代わりに集めて、
小さな液肥をつくるプラントで
生ゴミから作る液体肥料を作って、
それを無料で農家の人にさしあげてるんです。
で、農家の人は、
その液体肥料を使って野菜をつくるんですが
生ゴミを出してくれた人には
年に2回、段ボール2箱分くらいの野菜を
配るというようなことをやってるんです。

農家にとってみると、
やはり肥料を買うよりは
タダで手に入るからありがたいですし、
生ゴミを出すサラリーマンにも
畑や農業に対して、
常に意識を持ってもらうことができる。
ゴミを出す人も農業に参加していると言えるし、
行政もそれによって可燃ゴミが減っていく。
非常にうまく循環していますよね。

それぞれが社会や地域の中で役に立っている、
自分も参加してるんだ、っていう
システムができると
地域が盛り上がるような気がします。

糸井 自分は広告の発想をする人間なんで、
こういうふうに思うんですけど、
キャッチフレーズがあるかないかって
いうのが重要になると思うんですね。

以前、堺屋太一さんが書いてらっしゃいましたけど、
「外国の観光客を
 どこに連れていけばいいと思いますか?」
って、今、聞かれたとしたら、
ちょっと思い浮かばないですよね。
ちょっと前だと
秋葉原に連れていったらしいんですが、
今は、六本木ヒルズに連れていってもしょうがないし、
表参道ヒルズに連れていっても、興味ある人しか
おもしろくない。
そうなると、ニッポンといえば
いつまでも京都になる。
つまり、古い日本を保っている場所ですね。
どうしてほかに、いい場所が
思い浮かばないかというと、
今の日本が何をしているのかが、
さっぱりわからないからだと思うんですよ。

さっき柳瀬さんが言った
「里山さえきれいにして」なんて話は、
非常におもしろいと思います。
山で備長炭をつくる「炭焼きツアー」なんてのも、
実際に企画してやってみたら、おもしろいよ。
人がこなかったとか、意外とたくさん来たとか、
つまんなかったと言われたとか、
炭焼きのはずが違うことでよろこんだとか、
たくさんのことがわかると思う。
そういうことをはじめてみて、経験をして
すごい簡単なマーケティングをやって、
自分たちが自慢できることをちゃんと作ったら、
「いらっしゃい」って言える場所に
なるんだと思うんですよ。
日本全体がそう言えるようになると
一番いいと思うんですけどね。

 
(おわりです)
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