そのまま病院にいると、
びっくりするくらいすみやかに、
病院と提携している葬儀屋さんがやってきて
「どんな葬儀にしますか?」と
訊いてきます。
親が亡くなったばかりなので、
もちろん家族はみんな冷静ではありません。
「戒名の値段はこれ、棺はこういうものに」と、
いろんなものがどんどん決まっていってしまいます。
気づいたら3百万円近くの
見積もりができあがっていました。
そのとき、兄がふと
「お母さんは、戒名ついてよろこぶかな」
と言い、我に返りました。
兄は手にした見積書を見て、
ペンを持って×をつけはじめ、
葬儀は親戚だけを呼んだ、
簡易なものにしました。
生きるのも自分だし、死ぬのも自分です。
なにがよい、悪い、というものでもありません。
兄のような人がいてよかった、と思いました。
(N)