HOBO NIKKAN ITOI SHINBUN × ORIX Buffaloes
		野球の人・田口壮の新章 はじめての二軍監督
18 シーズン最終日

1年で一番悲しい日なのです。
涙が出ちゃうのです。

長年野球をやってきて、
こんな気持ちを知ったのは、アメリカに行ってから。
シーズン最後の日とはすなわち、
このメンバーで戦うことは二度とない、
という区切りのときなのです。
引退する選手あり、
再契約があるかどうかわからない選手あり、
苦しい道程をともに歩いたすべての人が
いとおしく離れがたい。

だから僕はシーズン最終日、家に帰りたくなくなります。
家に帰ったら現実に戻って、
魔法が解けてしまうような気持ちになってしまうから。
もう二度と彼らに会えないかもしれない、
もう二度と一緒に戦えない、
いや、もう二度と、僕は野球ができないかもしれない‥‥。
そんな思いにかられるから、
いつまでもぐずぐず帰らない子供のように、
帰宅が遅くなるのです。

今日はファームのシーズン最終日。
対するは、愛情あふれる水本監督率いるカープ。
監督同様、熱く心暖かなカープファンとともに、
素晴らしい神戸サブ最終戦を戦えたことに、
感謝の気持ちでいっぱいです。

来年からファームは大阪の舞洲に移転します。
しかし僕らのDNAにはいつも「がんばろうKOBE」があって
それがなんら変わることはありません。
強くなるための変化を恐れず、
今後も僕らとつながっていてほしい。
これまで神戸サブ球場を愛してくれた
すべてのファンの方に、
そうお願いしたいと思います。

それにしても、どれだけ涙をこらえた日だったことか。
「ピッチャー小松」
今シーズン限りで引退する
小松投手の名前をコールするだけで、
「こま」、のあたりでもう鼻が痛くなり、
「つ」、のときは目が充血。
しかし審判は、「こま」、だけで
「みなまでいうな」と慮る武士のように、
僕の気持ちをわかってくれました。

最後のご挨拶で、
小松投手の名前を口にするたび、もう半泣き。
コーチ陣とのミーティングでは、
本当にお疲れ様でした、と言おうとして、
またまた涙があふれかける。
コーチとは来年もご一緒するというのに、
それでもやっぱり泣けちゃうのです。

ちなみに、一年で2番目に泣ける日は、開幕です。
その日を迎えられた喜び。
ここに立っている喜び。
頬を紅潮させた選手たち。
もうそれだけで、鼻の奥が痛くなります。
うちのヨメは高校野球を見るとき、
勝敗には淡々としているのですが、
入場行進で大泣きします。
そう、開幕って、そういう感じやね。

そんな夜の帰宅後の夕飯に、嬉しいサプライズが。
なんと神戸サブ名物の「岡本カレー」が
おかずの一部に登場しました。
(今日の思いを、神戸の心を決して忘れないように)
これはヨメの粋な気遣い?
そう信じつつも、心のどこかで
彼女の手抜き疑惑が拭えないわたくし。




twitter
facebook
mail
home